津別 女性(83)。戦争の体験を 語り継ぐ。(連載6:伝書鳩)

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津別 女性(83)
戦争の体験を 語り継ぐ。(連載6:伝書鳩)

連載 語り継ぐ戦争 (9)

津別・女性(83)

津別町の女性(83)は仕事を定年退職した後、さまざまなボランティア活動を行い社会貢献してきた。なかでも中国人手品師に扮してのマジックショーは、幼稚園でも老人施設でも喜ばれた。戦中戦後、多感な子ども時代を満州・吉林市(中国東北部)に暮らした。むごいことをする中国人もいたし、日本人に対して優しい中国人もいた。「私達はたまたま中国人に助けられた。終戦ではなく敗戦。戦争は永久に駄目。あれは地獄」と語る。3回連載

戦中戦後、激動の暮らし (上)
沖縄だけではなく満州にも地獄が
満州の中国人、いい人も悪い人も

女性は昭和6年、津別生まれ。4歳の同10年、家族で満州に渡った。父は関東軍を相手に造材の仕事を手がけ、現地中国人を雇って羽振りが良かった。 ところが戦後、状況が一変。立場が逆転する。「これまでやってきたことを、日本人がやられる番になっただけ」と中国人達。 女性によると、戦後まもない満州では国民政府軍と中国共産党軍にソ連軍も加わり、いわゆる国共内戦が続いた。そんな中、現地の兵隊がやって来るという情報が伝わると「子どもや娘は天井裏に隠された」。連れ去られたり、襲われるという噂が広まっていた。実際に女性は天井裏から、中国兵士が襲う場面を見ている。惨劇はむごいものだった。 一方、元関東軍のある将校は戦後、我が家に逃げてきた。父親は民間人の服を与えた。すると、軍の仲間の悪口を言う。「同じ日本人としてあまり聞きたくなかった」。また他の家族らと一緒に逃げる途中、「子どもが泣くと敵に見つかる」と幼な子が元日本兵に川に投げられることもあった。その親は気が狂った。 やがて入った収容所では春になると、冬の間に外に埋められた死体が雪の下からごろごろと現れた。「南の沖縄も地獄。北の満州にも地獄があったことを知ってほしい」と女性。「今の年寄りが死んだら、誰がこの涙を後世に知らせるのか」
<つづく>

(掲載写真)
定年後のボランティアで中国人手品師に扮する女性

連載 語り継ぐ戦争 (9) – 経済の伝書鳩
http://denshobato.com/BD/N/page.php?id=80807

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連載 語り継ぐ戦争 (9)

津別・女性(83)

戦中戦後、激動の暮らし (中)
中国人の助けで収容所を脱出
引揚船氷川丸、見るたび涙

収容所では子どもや娘が現地中国人に引き取られることがあった。「高く売れた(売り飛ばされた)」という。女性の家族は「中国の『曹』さんに買われることになり、収容所を出ることができた」。曹さんは戦時中、自宅で料理人として働いていた。「引き揚げの途中、大変みじめな思いをする人もいた。そんな中、私達は曹さんのお陰で助かった」。使用人だった当時、女性の家族が曹さんの結婚式を挙げてくれたお礼だという。 だが、収容所を出て港に向かう「死の行軍」もひどいものだった。炭車(石炭貨車)に詰まれ、降りては歩き、引き揚げ船氷川丸の待つ島への長い道のり。やっとたどり着いた船に乗り込もうとする列の、私達の前にいた6人家族のうち1人の子どもの予防接種証明書が見当たらなかった。帰還を前にチフスやコレラなどの予防接種を数回にわたり受けることになっていた。係官は「病気を日本に持ち込んでは困る」と乗船を拒否。親は「ここまでやっと来た。戻る金も体力もない。乗せてくれねば親子で海に落ちるしかない」。係官は、上官に聞いてくると行ったが、その後どうなったかは分からない。子どもを泣く泣く現地に置いて来なければいけない家族もあった。 女性の家族は帰還後、曹さんの手がかりを求め横浜などを訪問。中国の関係機関を紹介してもらった。すると「いくら払う」と請求された。居そうな場所や人物像を伝えたが、先に金を払えという。当時としては破格の「一生暮らしていけるくらいの金を用意したが、なおも金を請求するので、不審に思い諦めた」。いい人もいたが怪しい人もいたのは、動乱の中での事実。 氷川丸は今、横浜港に係留されている。女性は「帰ってきてからこれまで3度横浜に行って、3度泣いてきました」。
〈つづく〉

連載 語り継ぐ戦争 (9) – 経済の伝書鳩
http://denshobato.com/BD/N/page.php?id=80853

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連載 語り継ぐ戦争(完)

津別・女性 (83)

「長兄は臨月の妻と4人の子を残し昭和20年4月に、次兄は特攻志願で同6月にそれぞれ行きました。立派な姿でしたが胸の内は、と思うと…。女姉妹だけが残りました。国からもらった骨箱には、小石が3個。どこの石だか…」

戦中戦後、激動の暮らし(下)
中国との橋渡し…近年はボランティアや通訳で
兄2人を戦争で亡くすも「憎しみはない」
でも戦争は人間を人間でなくする

女性は戦後、結婚し4人の子を育てた。「子どもの教育に手を抜くな」と、ご主人。女性は丸玉産業で働きながら子どもの授業参観には必ず参加した。当時、裕福とはいえない職工家庭が参観日に出席するのは珍しかったという。でも「教育は何よりも大切」と福島家は貫いた。 25年間勤め、ボランティア活動にも取り組んだ。平成の初めころからは、目の不自由な人のために町の広報誌をカセット録音して届ける朗読ボランティアを率先して始めた。ボランティアグループ名を「ひなたぼっこ」と名づけたのは「のんびりと心に余裕を持って取り組みたかったし、長くボランティアを続けられたのは、同じ心を持つ人がいて助けられたから」。 中国人風衣装で愉快に手品師を演じるのも「社会のために、何か自分で役に立てることはないか」と思ってのこと。幼い頃に覚えた中国語がこんなところで生かされた。 また中国語を話せることから、平成14年、津別町に中国から農業研修生が訪れた際には、町内の農家に出向いて日本語を教えた。「素直ないい青年達だった」。その後、中国に帰って幹部をめざすその青年達から女性の元へ、感謝の手紙が届いた。 戦争について子ども達に話した。「日本人の中にも中国人の中にも、いい人もいれば悪い人もいる。憎しみはない。でも戦争は人間を人間でなくさせる」。 20年ほど前から自分史を書き残したいと思ってきた。でも書き始めると「親類や友達のことが思い出され、涙が出て書けなくなるんです」。 北国の冬 満州思いそっと泣く-女性 (寒)

(掲載写真)
中国人に扮し、手品でボランティア

連載 語り継ぐ戦争(完) – 経済の伝書鳩
http://denshobato.com/BD/N/page.php?id=80912

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戦争の体験を 語り継ぐ。(連載4:伝書鳩)
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戦争の体験を 語り継ぐ。(連載5:伝書鳩)
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