JMTSP アメリカ 音楽療法だより (98)
- 2014年07月13日(日) 0:31
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伊賀音楽療法研究会からのメールマガジンです。(2014.7.10)
JMTSP アメリカ 音楽療法だより (98)
News from JMTSP America music therapy (98)
伊賀音楽療法研究会メールマガジン
7月号(No.155)[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(98)皆さんこんにちは。伊賀音楽療法研究会メールマガジン7月号の記事を担当いたします、音楽療法士の早川佳子と申します。今回で三回目の執筆となります。第一回目の原稿は、2007年の12月号でした。当時私はまだカリフォルニアで音楽療法のインターンをしておりました。記事の内容はケンタッキー州ルイビルで開催されたAMTA (American Music Therapy Association)の学会についての報告でした。(AMTA 2007 Conference: the 9th Annual AMTA Conference, Louisville, KY, USA. November 2007)当時留学生であった私は音楽療法に対する希望と熱意に燃え、初めて参加した学会での感動と喜びを素直に記事に書きました。その後、インターンを終了し、母校のColorado State University(コロラド州立大学)に戻り、大学院に進学し、音楽療法で修士号を取得し、かなり苦労して米国公認音楽療法士(MT-BC)の資格を取りました。大学院卒業後、OPTの期間、コロラド州立大学のある街、Fort Collinsに滞在し、ピアノを教えたり、パートタイムで音楽療法のセッションをしたり、大学院の研究室で、スーパーバイザー、PT、ケアワーカー、学生仲間と一緒にNeurologic Music Therapy(神経学的音楽療法)の実践に取り組む(The Center for Bio-medical Research in Music: Incorporate an interdisciplinary approach to rehabilitation work in collaboration with a physical therapist and care givers to facilitate, train and retrain cognitive, sensory and motor functions)など、自分なりにアメリカでできることを試みました。
2011年4月下旬日本に帰国し、同年7月より都内の介護老人保健施設にて2013年3月末までの2年弱、常勤の音楽療法士として勤務いたしました。(Providing individual and group music therapy to geriatric clients including dementia, stroke, aphasia, and muscular disease as a full-time professional music therapist) 第二回目の記事は2012年の12月号で、プロになってプロの厳しさを痛感しつつ、自分なりに毎日頑張っている中で「音楽療法って、音楽療法士って何だろう」と今一度素朴な疑問を自分自身に投げかけ、「音楽療法士ってどんな仕事ですか?」という問いについて、仲間の助言、自分自身の体験をもとに書きました。
2013年4月からはフリーランスとなり、様々な現場で音楽療法のセッションを行いました。同時に色々なところに見学に行き、多くの音楽療法士さんや介護の現場で働くスタッフの皆さんと話し、自分自身の音楽療法と向かい合いながら、これからどうしていくか悩み、模索する日々がしばらく続きました。2013年末、仕事の話が決まりました。そして、2014年1月より、株式会社ケアサービスの第二事業部に配属され、認知症対応型通所介護の事業所にて音楽療法のセッションを行っております。今回三回目の原稿執筆に当たり、現在私が勤務させていただいているケアサービスでの音楽療法の取り組みについて、紹介させていただきたいと思います。
私は株式会社ケアサービスの第二事業部(通所介護部門)に所属しています。ケアサービスでは常勤と非常勤、それぞれ一名ずつ音楽療法士が働いております。私が配属される前に、日本音楽療法学会認定音楽療法士の横山さんという方が、常勤で音楽療法をされていました。横山さんは介護福祉士でもあり、もともと弊社で介護の仕事をされながら音楽療法士の資格を取られました。そしてケアサービスにて一から音楽療法の基盤を構築されました。私は横山さんから音楽療法の仕事を引き継ぎましたが、お客様、ご家族、スタッフ、ケアマネージャーと皆様にご理解をいただくまで、何もないところから音楽療法を築いてこられた横山さんのご尽力に頭の下がる思いです。
現在ケアサービスには認知症専門のデイサービスセンターが4か所あり、音楽療法士はその四つのセンターで音楽療法を行っています。認知症対応型通所介護の事業所(以下認知症DSとする)にて、私達が取り組んでいる音楽療法の目的について、横山さんがまとめられた6つの柱をもとに見ていきたいと思います。
1.情緒の安定 calm down and provide relief from stress and tension
音楽は、知的に理解するより早く情動を動かすという特性がある。そのため、知的理解が難しくなった認知症の方でも、周りの方と同じように感情が動く体験をしたり、感情を発散したりすることで、情緒が安定する。2.残存機能の維持、機能低下の予防 preserve residual function
加齢に伴い、思うようにできなくなることが増えてくる。音楽療法の場では、音楽を一つのツールとして、その方の残された機能や隠れた能力に目を向け、引き出す。3.コミュニケーションを促進する promote interactive communication
他者と同じ音楽や時間を共有し、感情を分かち合うことで、一体感が生まれる。またその中で他者との関わりを持つことで、コミュニケーションが促される。4.回想を促すreminiscence
昔の歌を歌うことで長期記憶に刺激を与え、回想を促し、脳を活性化する。5.自己表現を引き出す self-expression
日常生活では、様々な感情を体験する機会も感情を大きく動かすほどの刺激も少ない。音楽療法の場では、声を出したり、曲について思い出話をしたり、涙を流したりと、様々な形で感情を表出し、表現することができる。6.自信を取り戻す enhance self-esteem
先述した通り、高齢者は日常生活でできなくなったことが増え、失敗体験も多くなる。音楽療法では、よく知っている歌を歌い「歌いきった!」と達成感を味わったり、簡単な楽器活動で「鳴らせた!」という成功体験をすることができ、自尊感情を取り戻し、自信につながる。以上の目的は、クライアントお一人お一人のQOLの向上という大きな目標に繋がります。(an enhanced quality of life for both the client and his or her caregiver) また、ご家族やスタッフに対象者の音楽療法での様子を知って頂き、日常場面では見られない表情や行動などの変化をお知らせし、音楽療法以外でのクライアントの日常生活がよりよいものとなるよう努めています。ケアサービスでは毎月「月次報告」というお客様のデイでのご様子について報告書を作成していますが、音楽療法でも毎月、お客さまお一人お一人の音楽療法セッションにおける活動、セッションの中での特記事項を記載し、ご家族とケアマネージャーにお知らせしています。
続いて音楽療法の効果について考えてみたいと思います。認知症DSのお客様は全員何かしらの認知症状があります。ですからこれから何かをドラスティックに改善していくというよりも、まず安全で安心できる「場所」を提供し、信頼関係を構築したうえで、クライアント一人一人の特色、ニーズ、その方のバックグラウンドを考慮したセラピーを実施し、リラックスして穏やかに楽しみながら、QOLの向上を目指していくアプローチを行っております。従って音楽療法の効果も「目に見える数値」というよりも「認知症DSにて快適に、その人らしく意義のある日常生活を送ってうただく」ということに重点を置いています。
現在、非常勤音楽療法士として活動されている渋木さん(日本音楽療法学会認定音楽療法士)は、平成24年5月に入社され、前任の音楽療法士の横山さんとケアサービスの音楽療法に尽力されてきました。渋木さんは横山さんと共に、お客様お一人お一人の綿密なアセスメントを行い、お客様の既往歴、音楽経験や好み、ニーズ、目標、トリートメントプラン等をまとめ、「音楽療法インフォメーションシート」を作成されました。そして音楽行動チェックリスト(MCL-S)、佐治改訂評価法、卯辰山式音楽活動評価表(UCMA)、高齢者集団音楽療法モデル評価表、認知症用愛媛式音楽療法評価表などをベースにしたケアサービス独自の「音楽療法・数値的評価シート」を作り上げられました。私もこの評価項目に従い、毎回のセッション終了後フィードバックをして、お客様お一人お一人の評価・記録を行っております。私達ケアサービスの音楽療法士は、例えば20名のお客様のセッションを行う場合、セラピスト1対お客様20、ではなく一対一×20というコンセプトで、集団としての調和を常に考慮しながらも、お客様お一人お一人と向き合うセラピーを心がけています。
「医師が薬を処方するように、音楽療法士は『音楽』を処方する」音楽療法のセッションはとても楽しく、一見音楽レクリエーションと同じように捉えられがちですが、セラピストが音楽を処方してセラピーを行うという大きな違いがあります。ですからセラピストは、セッションで使用する音楽にも時として「副作用」がありうる、ということを念頭に置いて、日々の音楽療法に取り組んでいます。また常にお一人お一人と向き合うことを心がけていても、すべてのお客様に全くフェアに同じような効果をもたらすことは困難です。こういった課題、悩みを抱えながら音楽療法に取り組んでいる私達にとって、ケアサービスのスタッフはとても頼りになります。お客様のご体調・ご様子を考慮しながらのセッションプラン、準備、セッション中のアシスタント(Pレク担当といいます)フィードバックと、スタッフの皆さんは音楽療法士と一緒にお客様により良い音楽療法を提供できるよう、サポートしてくれます。この頼もしい共に働く仲間がいて、私達音楽療法士はよいセッションができるのです。
株式会社ケアサービスのwebsiteです。http://www.care.co.jp/最後までお読みいただいてありがとうございます。よろしければご意見・ご感想などお寄せください。y-hayakawa@care.co.jp
株式会社ケアサービス 第二事業部 音楽療法士
早川 佳子
Yoshiko Hayakawa, MM, MT-BC[編集後記]
去る6月28日(土)、毎年恒例となった伊賀市男女共同参画イベントに、伊賀音楽療法研究会からブース出展させていただきました。写真展示による活動紹介と、基調講演の前後に参加型セッションを行いました。 前半セッションでは、たくさんの方が足を止めて季節の歌を一緒に歌い、トーンチャイムを鳴らし、楽しんでくれました。そして後半セッションでは、市の担当者さんが声かけしてくださり、ロビーの真ん中に移動して演奏させてもらいました。 イベント自体が年々ブラッシュアップされて、私達の存在や役割も明確になってきていることに、継続のチカラを感じます。 また、三重県知事の奥様である武田美保さん(元シンクロナイズドスイミング選手、五輪3大会出場メダリスト)のご講演も、大変刺激的でした。 メダリストのお話を聴くのは初めてでしたが、やはり世界の舞台で発揮できる方というのは、あれくらいのパワー・情熱があるんだなあと・・。非常に聡明なお方で、ご自身の生い立ち、お母様のお話から、「結果を出すこと」への意識の高さに驚かされました。 私たち研究会も、結成15年目。継続の力を随所で示せればと思います。(よ)[伊賀音楽療法研究会メールマガジン]
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伊賀音楽療法研究会 – 伊賀市社会福祉協議会
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関連サイト
Japanese Music Therapy Students & Professionals (JMTSP) – Ameba
ameblo.jp/jmtsp/
Japanese Music Therapy Student & Professionals
www.geocities.jp/jmtsp2004/
関連エントリ
音楽療法士ってどんな仕事ですか?」
masaokato.jp/2012/12/12/123304
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