クッシーとネッシーの姉妹愛「私のクッシー物語」

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1月15日は、Nessie(スコットランドのネッシー) Kussie(北海道のクッシー) 前川さんの誕生日。(文責:美幌音楽人 加藤雅夫)

写真:美幌峠から見える屈斜路湖(北海道) ネス湖(Loch Ness)

「私のクッシー物語」作・語り 前川 市治郎(美幌)
「私のクッシー物語」CD提供 森 貞夫(東京)
「私のクッシー物語」CD公開協力 北守 ただよし(美幌)

再生ボタンをクリック: 前川さんの肉声朗読

クッシーとネッシーの姉妹愛「私のクッシー物語」

阿寒国立公園には、ご承知のように三つの火山湖があります。いずれも原始のままの美しさを、そのままソックリ現在に残しておりますが、またともに伝説の湖として今もなお語りつがれております。阿寒湖にはマリモの悲恋物語があります。摩周湖の火の山にまつわる哀しい話は、今年も旅する人に熱い涙を流させることでしょう。

さて、屈斜路湖には、いつ解けるともしれない深い謎に包まれた秘められた物語があるのです。

それはそれは、ずいぶん昔のことであったといいます。何千年、何万年、いいえそれどころてはないんです。もっともっと気の遠くなるほどの大昔であったといいます。そのころの地上の世界は、今より水がきれいに澄んで山にも野にも緑があふれ、その中にたくさんの動物たちが棲み、自由に平和に暮らしていたということであります。その頃のあの動物たちは、その後、永い永い年月の間にどのように進化したのでしょうか。また退化したのでしょうか。今地上に現存しているものはないといわれております。ただ時折り、深い土の中から、化石になった大きな骨格の破片が発見されては、わずかに当時を想像させるにすぎません。その時代の天上の世界も、実にすばらしかったといいます。

夜ごと夜ごとの星は、今よりももっともっと鮮やかに輝いて、そのまたたく音も地上では降るようにも聞こえたといわれております。その星空に、女王星と呼ばれてサファイヤのようにきらめく、五つの光ぼうを放つ一際美しい星がありました。

その夜も、平和に更けていよいよ華やかな夜半になろうとする時でした。突然、天体に大きな異変が起こったのです。女王星もはげしくゆれました。その振動が更に強くなった一瞬です。それまで美しく輝いていたサファイヤ色の光ぼうが二つ女王星を離れたのです。二つの子星は並んでどこかへ落ちてゆきます。どこへ行くのでしょうか。どうやら地球に向かっているようであります。

そして地球に近づくと、その一つは西へ西へと流れて、現在のスコットランドのネス湖へ。もう一つは東へ東へ流れて北海道の屈斜路湖へ。ともに蒼白い光の尾をひいて、湖底深く沈んだということであります。大地が大きく裂けて。その裂け目に水を湛えたような断崖に囲まれたネス湖に、間もなく怪獣の噂が流れました。人々はその怪獣を「ネッシー」と呼んで、あの星屑の化身だと思っていたそうであります。

一方、火山の陥没によってできたというわが屈斜路湖でも、やがて湖畔の人々の間に怪獣の噂がささやかれました。誰いうとなく「クッシー」と呼んで、あの星の子だと信じて疑うものはなかったといわれております。そして、この話は親から子へ、子から孫へと語りつがれていったということであります。

さて、天上の世界から湖底の生活と急変した「クッシー」は、孤独の寂しさにたえかねて、波静かな日は湖面に自分の姿をうつして見るのでした。けれども変わりはてた我が身の醜さを嘆くでもありません。このように産み落とした親を恨むでもありません。不しあわせな運命を呪うでもなく、夜ごと美しい星空を見上げては、ただひとり物思うときが多かったといいます。何を思い、何を考えていたのでしょうか。物をいわない「クッシー」の心を、私は詩にしてみました。

昔むかしの大むかし そのまた昔の大むかし
夜空に星がかがやいて 二つ流れて落ちたとさ

スコットランドの湖と 日本の北のみずうみに
サファイヤ色の尾ひいて 二つ流れて落ちたとさ

誰から受けたこの身やら いつ迄生きるさだめやら
千年ひそむ屈斜路湖 いつか呼名もクッシーさ

 

さて、屈斜路湖をめぐる四季の移り変わりは早いものであります。四月の末になると、張りつめていた厚い氷が解けて、岸辺の水がぬるみ太古のままの草花が一斉に咲きます。その楽しさも短く、見上げる外輪山や中島が緑一色に衣をかえた夏も束の間、澄んだ湖面に月影が砕け、やがて枯葉が浮かび、間もなく白鳥が三羽、五羽と数を増してゆきます。氷の下での冬眠の時期がまたやってくるのです。

クッシーとネッシーは、いずれが姉か妹かは知るすべもありませんが、今は地球の裏と表の湖底を棲み家として、再び会うことの許されない孤独の寂しさからでしょうか。かって女王星の子として、共にきらめき合った華やかな天上の夜の懐かしさからでしょうか。互いに便りを交し合い、慰め合い、はげまし合っているのだといわれております。

こころみに夜更けの屈斜路湖の空をごらんください。しきりに西へ流れる星を見ることができます。あの星は、クッシーの便りを持って遠くスコットランドのネス湖へ、そしてネッシーに届けられているのだということであります。折り返すように西風が吹いてまいります。美幌峠の笹原をサッサッと波打たせながら、湖心へ吹きおろしてゆくあの西風に、ネッシーからの返事が次ぎつぎに、届けられているのだということです。クッシーはきっと湖面に首をのばして、風音の一つも聞き漏らすまいと、聞きいっていることでしょう。このようにして星と風との便りは、摩周岳の空に暁の明星が輝くころまで、夜を徹して妹いとし、姉恋しとつづけられているのだということです。

さて、かって天上の華と、うたわれたあの女王星は、二つの小星を地球へ落として以来その光も色もあせて、今はどの星座を探しても見つけることできません。でも、クッシーとネッシーの身を案じながら空のどこかで見守りつづけ、寂しくまたたきつづけているのだといわれております。そして、地上の人々の「ネッシーとクッシー」の唄声が聞こえますと、またたきを忘れ、目をうるませて聞き入っているのだとも、いわれております。

どうか皆さんもこの歌を唄ってやって下さい。クッシーとネッシーのために。そして今はおとろえた母星のためにも。

花よ青葉よ月かげよ 白鳥くればまた冬よ
暗い湖底で春をまつ ネッシーあなたはどうしてる

西へ流れるお星さま 私の思いをつたえてよ
ネス湖のたよりは西風が 吹けばくるだろとどくだろう

北のロマンー謎と伝説の湖・屈斜路湖(くっしゃろこ)
私は屈斜路湖の美しさと、クッシーとネッシーの姉妹愛をいつまでも育んでやりたい。華麗な舞を披露する白鳥とともに、クッシー物語には北国の夢とロマンがあります。遠い異国スコットランドに住むネッシーと、この道東の風土にひそむクッシーが互いに呼びあい、便りを交わしあっていることに、私は深い感動を覚える。生きとし生けるもの誰でも永遠の平和と静けさを望み安住の地を捜し求めている。だから、心ない探検者たちの追及にさらさせることがあってはならないのです。
美幌町/前川市治郎 1907年(明治40年)1月15日生まれ、1999年(平成11年)1月22日死去。

森貞夫氏(東京)からのお便り

先日、電話でお話したCDを同封いたしましたのでどうかお聴きいただければと思います。

前川氏との出会いは 1970年頃だっように記憶しております。SL全盛期の北海道に撮影旅行中、何気なく宿泊した宿が「ビホロホテル」でした。それから何度か訪れるうちに、「ただいま」といって宿泊するようになっていました。夕食は決まってジンギスカンで、部屋で食べるのではなく、前川夫妻と共に住まいのほうで頂いていました。
(中略)
その後も毎年、年賀状は欠かさず交流を深めていたのですが、1995年ごろから 1999年頃まで住所が変わったりした関係で音信普通になってきました。今思えばちょうどその時期に亡くなられたのですね。

昔話を語りだすとまだいろいろありますが、またの機会ということで音源について語らせていただきます。

駅前にクッシーの像ができたという連絡をもらい、美幌に買ったばかりのオープンデッキを持ち込みました。録音は事務所で、石油ストーブに置いたやかんの湯が沸く音を気にしながら撮ったのを思い出します。
当時、横浜の寮に住んでいた私は、同僚たちの助けを借り この音源をミキシングし作品に仕上げました。自己満足のまま現在に至っています。
定年を控え身辺の整理をしていたところ、当時作成したオリジナルカセットが出てきたので久しぶりに聞き返しました。当時、前川氏に送ったか否か定かではありませんが、今聞いても立派に通用すると思い、美幌の有線局かケーブル局にでも音源を持ち込んで流してもらえれば前川氏への供養にでもなるかと思い、いろいろ調べていたしだいです。

音源は、基となった前川氏の肉声のみの朗読オープンリールテープとCD化の音源に使ったオリジナルカセットテープがあります。

私のクッシー物語
作・語り 前川市治郎
録音・CD制作 森貞夫
REC. 1979.2.10 (Bihoro Hokkaido)
UHER 4200 STEREO IC REPORT
REVOX 877-2
EDIT . 1979.4.15.(Yokohama Kanagawa)
TEAC A-630
SONY TC-2890 SD
SONY MX-14

森 貞夫(東京都)

関連エントリー

美幌峠 クッシーおじさん – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/bihoro/kussie

天皇家の皆さま方と美幌峠(美幌町) – 美幌音楽人 加藤雅夫
(前川さんのビホロホテルで、明仁天皇がカレーライス…)
http://masaokato.jp/2009/04/10/000013
 

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加藤 雅夫
@bihorokato 美幌音楽人加藤雅夫(北海道美幌町)のツイート
1月15日は、モンスター姉妹(ネッシーとクッシー)誕生日! (独断で公表)
加藤 雅夫 (bihorokato) on Twitter http://twitter.com/bihorokato

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3 件のコメント

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    美幌のミュージシャン北守ただよし
    DROPKIX.net Tadayoshi Kitamori http://dropkix.net/

    TeeK
    @dropkix 北海道 美幌町
    活動拠点:北海道 美幌町うた・作詞・作曲・編曲を自ら行い、「自分らしさ」+「心に残せる音」をいつも想い描く。
    電脳音楽的経歴:MSX~SE/30&Vision~Windows&Cubaseに落ち着く♪サウンドメイキングを楽しみながら活動するクリエイターでございます。MySpaceに音源がありますので聴いてみて下さい♪
    http://www.myspace.com/dropkixz

    Teek (dropkix) on Twitter http://twitter.com/dropkix

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 15 日 01:50

  2. 私のクッシー物語・・夢のある、いい童話ですね。子供に語って聞かせたいお話です。朗読も聞かせていただきました。ありがとうございました。

    なりひら より 2011 年 1 月 15 日 02:24

  3. おはよう!なりひらさん。

    1月15日は、クッシーおじさんこと前川市治郎(私のクッシー物語)の誕生日です。クッシーとネッシーの誕生日も 1月15日、勝手に決定いたしました。

    次の、私のきぼうは、小惑星(kussie)(nessie)の発見です。美幌の天文愛好家・円舘金(えんだてきん)の協力を特に期待する。

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 15 日 08:52

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