世界の音楽療法の情報 (2014.12.10)
伊賀音楽療法研究会からのメールマガジンです。(2014.12.10)
「世界の音楽療法の情報」 (2014年 12月10日)
“Information of music therapy in the World” (December 10, 2014)
[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(103)皆さんこんにちは。伊賀音楽療法研究会メールマガジン12月号の記事を担当致します、音楽療法士の早川佳子です。早いもので今年も残すところ一ヶ月を切りました。皆様にとって2014年はどんな年でしたでしょうか?私は一月より株式会社ケアサービスにて音楽療法士として勤務させていただき、必死で走ってきた一年でした。今年の7月に「ケアサービスでの音楽療法の取り組み」について記事を書きました。今回はその続編「ケアサービスでの音楽療法の取り組み その2」と題してお届けしたいと思います。今回の記事では株式会社ケアサービス独自の「法人内の音楽療法士育成の取り組み」についてご紹介致します。
前述したように私は2014年1月に株式会社ケアサービスに入社しました。まず私が入社する以前からの株式会社ケアサービスにおける音楽療法の経緯についてご紹介します。2010年4月に音楽療法士と楽器ができるヘルパーが組み、各事業所に出向いてイベント等を行うことから、音楽療法活動が始まりました。具体的には新店オープンセレモニー・内定式・経営計画発表会等で実演と共に音楽療法活動を紹介しました。2012年4月、認知症対応型デイサービスセンター(以下DSとする)浜田山がオープンし、以前から稼働していたDS文京千石とDS大森中と合わせて、3事業所となりました。同時に音楽療法も認知症DSのみで専門的に実施することになりました。前述した2010年から音楽療法活動に参加し、現在音楽療法士育成の取り組みにおいてトレーニングを受けているヘルパーAさんはこの時、音楽療法士育成のためDS浜田山へ着任しました。2013年10月にDS仲池上がオープンし、オープンと同時に音楽療法のセッションも開始しました。これで株式会社ケアサービスにて音楽療法を行っている認知症DSは4事業所となり、現在に至っています。そして今、2013年3月よりスタートした「音楽療法士育成の取り組み」が進行しています。トレーニングを受けているAさんは、現役のヘルパーで大学は声楽科を卒業し、部活のオーケストラでチェロを担当していました。私は2014年1月に入社いたしましたので、この取り組みも引き継ぐことになりました。Aさんは会社が全面的にサポート、バックアップするという画期的な、そして恵まれた環境の中で仕事をしながら音楽療法士の資格取得に向けて日夜頑張っています。それではまず資格取得にあたり、必要なことを以下にまとめます。
必修講習会への参加 (※必須)
必修講習会は2年サイクルで開催される。サイクルの途中から参加することは出来ない。
2日間に渡って継続して開催される講座は、連続して受講する。
何らかの理由で一部受講できなかった場合は、その科目だけ次のサイクルで受講する。
必修科目の読み替えは一切ない。
必修講習会の中の「音楽療法技法A」の受講前に、ピアノ実技と音楽理論の試験を受験して合格する必要がある。日本音楽療法学会または各支部の主催する学術大会への参加 (※必須)
メインセラピストとしての臨床経験 (※必須)
メインセラピストを経験した上での事例研究発表 (※必須)
事例研究レポートの提出2本 (※必須)
スーパービジョンの受講と報告書の提出 (※必須)
講習会への参加このように音楽療法士への道は長く、厳しいものであることがわかります。ではこのような長い道のりを経て音楽療法士を育成し、株式会社ケアサービスで音楽療法を行うメリットはどのようなものがあるのでしょうか。ここでデイサービスにて音楽療法を実施する効果について考えてみます。
1.お客様の視点
「普段の活動に参加できない方が音楽療法の場には参加することができる」「普段見られない表情が見られる」「非日常的な体験ができる」「他のお客様と関わることができる」など、音楽療法活動の中で、お客様がご自身の可能性を引き出すことができます。デイサービスという安全で安心できる「場所」において、音楽療法士はお客様と信頼関係を構築したうえで、お一人お一人の特色、ニーズ、その方のバックグラウンドを考慮したセラピーを実施し、リラックスして穏やかに楽しみながら、QOLの向上を目指していくアプローチを行っています。また音楽療法の中で「回想法」の視点から、昔の歌を歌うことで長期記憶に刺激を与え脳の活性化を図り、思い出や当時のエピソードを他のお客様と共有することでコミュニケーションや社会性の向上を促しています。2.スタッフの視点
音楽療法の場では、日常生活場面で見られない様子を垣間見ることができます。お客様の残された可能性を知ることでお客様に対する見方が変わり、普段のケアにおいて新たな視点でアプローチを試みることができます。また、株式会社ケアサービスでは「月次報告」というお客様のデイサービスでのご様子について報告書を作成していますが、音楽療法でも毎月、お客様お一人お一人の音楽療法セッションにおける活動、セッションの中での特記事項を記載し、ご家族とケアマネージャーにお知らせしています。このように月次報告書にて音楽療法におけるお客様のご様子をご家族やケアマネージャーに報告することで、小さな変化まで気づくことのできるきめ細やかなケアがなされており、その「変化への気づき」の視点がスタッフの成長に欠かせないものと考えます。この「気づき」は音楽療法の中で見られた変化について現場のスタッフと共有し、お客様のデイサービスでの日常生活がより充実したものになるよう繋げていけます。3.法人事業所の視点
ビジネスの観点からすると、音楽療法を実施することは、お客様の臨時利用・振替・増回・新規獲得に繋がっていると言えます。実際、私が株式会社ケアサービスにて常勤音楽療法士として勤務するようになり、「音楽療法目的」でいらっしゃるお客様が増えました。またセンターのご見学にいらしたお客様が音楽療法セッションに参加され、大変楽しまれ、ご利用されるようになったケースがいくつもありました。更に法人事業所の視点から、常勤の音楽療法士を雇用している企業が少ない中、「新しいことを積極的に取り込んでいる企業」というイメージアップに繋がると言えます。それでは法人内で音楽療法士を育成するメリットはどうでしょうか。
以下のことが挙げられると考えられます。
1.ニーズに直結した実践的な育成ができる
2.介護視点(知識や技術)を持った専門性の高い音楽療法士になることができる
3.法人の特色を理解した音楽療法士になることができる現在AさんはDS浜田山で常勤のヘルパーとして週4日勤務し、一週間に一回DS浜田山以外の認知症DSに専任の音楽療法士(私)と共に出向き、一日音楽療法アシスタントとして動いています。私はAさんのスーパーバイザーとして、音楽療法士の一日の勤務(出勤してから情報収集、朝の歌の会、プログラミング、スタッフとの打ち合わせ、セッション準備、実施、片付け、フィードバック、評価・記録、次回の課題について考察等)を指導しています。Aさんは最初の内は私が実施するセッションの中で、一部伴奏のみ担当していましたが、段々活動を広げ、自分でプログラムを立てるようになり、今では(まだまだ課題はありますが)一時間のセッションを一人で行えるようになりました。この法人内での「音楽療法士育成の取り組み」は、音楽大学や専門学校等の学校での育成と違い、実際に現場で介護に従事しながら、音楽療法を実践できるというメリットがあります。そしてこの取り組みは、より専門性の高い認知症ケアに特化した音楽療法士を育てるという、教育機関の育成とは異なる資格習得後即戦力になるという強みがあります。今後介護報酬が削減されるという厳しい現実の中で、音楽療法は一つのビジネス効果になると考えられます。外部から音楽療法士を講師として呼び、音楽療法を取り入れている事業者はありますが、法人専属の常勤の音楽療法士がいて、スタッフと共にきめ細かいセラピーを実施している所は、日本ではあまり多くありません。この「株式会社ケアサービス独自の音楽療法」が他社との差別化に繋がるかもしれません。このような未来に向けて可能性のある「法人内の音楽療法士育成の取り組み」に私も力を尽くしたいと思っています。そしてAさんが良いセラピストに成長することを願っております。
今年一年、本当にどうもありがとうございました。皆様どうぞ良いお年を!
株式会社ケアサービスのwebsiteです。
http://www.care.co.jp/
株式会社ケアサービス 第二事業部 音楽療法士 早川 佳子
Yoshiko Hayakawa, MM, MT-BC[編集後記]
夏ごろより私たち伊賀音楽療法研究会のミュージックコーディネーターで検討していた介護予防・口腔ケア替え歌『健口ソング』が出来上がりました。 先月からいよいよ本格的にサロンや老人クラブ等の派遣先や、様々な施設等個々の現場で普及に努めています。 言語聴覚士や歯科医といった専門家からも助言をいただきながら、歌による介護予防や口腔ケアについてまずは私たちが学ぼうと、年明けに学習会を予定しています。2015年は研究会にとって「口腔ケア元年」になりそうです。みなさまよい歳末を、そしてよい新年をお迎えください。[伊賀音楽療法研究会メールマガジン]
このメルマガは、毎月1回以上発行する予定です。
ご意見ご感想は、inui@hanzou.or.jp まで。
セミナー・講習会情報など、音楽療法に関する情報をお寄せください。伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室
〒518-0869
三重県伊賀市上野中町2976-1上野ふれあいプラザ3階
伊賀市社会福祉協議会
電話番号 0595-21-5866 FAX番号 0595-26-0002
Eメール inui@hanzou.or.jp伊賀音楽療法研究会メールマガジンのバックナンバー・配信停止はこちら⇒ http://archive.mag2.com/0000071430/index.htm
伊賀音楽療法研究会 – 伊賀市社会福祉協議会
http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm
関連エントリ
「音楽療法士ってどんな仕事ですか?」
http://masaokato.jp/2012/12/12/123304
JMTSP アメリカ 音楽療法だより (98)
http://masaokato.jp/2014/07/13/003139
世界音楽療法 の検索結果
http://masaokato.jp/?s=世界音楽療法
フェイスブック (Facebook)
Yoshiko Hayakawa | Facebook
https://www.facebook.com/yoshiko.hayakawa.752
伊賀音楽療法研究会 | Facebook
https://www.https://www.facebook.com/pages/伊賀音楽療法研究会/380747902040579
加藤 雅夫 | Facebook
https://www.facebook.com/bihoro.kato
ツイッター (Twitter)
加藤 雅夫
@bihorokato
みなさま、イランカラプテ! 日本と世界の人々と共に“平和心”を大切に育てる事が私の願いです。Guitar Mandolin Music 美幌音楽人
北海道美幌町 · masaokato.jp
加藤 雅夫 (@bihorokato) | Twitter
https://twitter.com/bihorokato
- 一つ新しい記事: 日加タイムス e-nikkaからのメールニュース。(2014年12月11日の配信)
- 一つ古い記事: 日本の音楽療法の情報 (2014.12.10)
コメントをどうぞ
- お名前とメールアドレスは必ず入力してください。
(メールアドレスは管理者にのみ通知され、コメント一覧には表示されません) - いただいたコメントは管理者の承認が必要となる場合がありますのでご了承ください。
コメント
コメントはまだありません。