JMTSPアメリカ音楽療法だより(金光 美貴子)
- 2011年05月11日(水) 18:57
- カテゴリ: Twitter, アメリカ, 健康・福祉, 音楽療法
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三重県伊賀市にある伊賀音楽療法研究会(伊賀市社会福祉協議会内)からメールマガジンが送られてきました。5月号のリポーターは、米国インディアナ州で活動の音楽療法士金光美貴子。
音楽療法のニュース(Google) アメリカ音楽療法のブログ(Google)
地図と写真: インディアナ州(アメリカ合衆国) 牡丹(Peony)
伊賀音楽療法研究会メールマガジン5月号(No.118)
[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(65)
5月担当の金光美貴子と申します。
3月11日に起きた大震災により被災された方々に、深くお見舞い申し上げます。報道やニュースで見る現実に心が痛み、被災地の方々の悲しみや苦労ははかり知れません。今もなお余震が続き、原発への心配はおさまることがありません。一日も早く皆様が落ち着いた元の暮らしに少しでも近づくことができますように、お祈りしています。私は今、インディアナ州で、発達障がいのある大人や子どものポピュレーションを対象にセッションをしています。発達障がいと言いましてもとても幅広く、脳性麻痺、自閉症、アスペルガー障がい、精神遅滞、ダウン症、注意欠陥・多動性障がい、言語障がいなどを含め、複数の診断を受けているクライアントもたくさんいます。そして、盲目の方や加齢により認知症が始まったり、気分障がいなどの精神障がい、また行動障がいを併発している方もいます。私の働く会社では、音楽療法士は私を含めて2人しかいません。他の約10人はbehavior consultant(日本語で行動療法士と訳せると思います)です。行動に何らかの問題がある場合(例:言葉でうまく表現できず行動で表してしまう)、この行動療法士たちが、クライアント本人と直接セッションをしたり、家族やスタッフに向けての訓練を通したりして、このような行動・行為を減らしていきます。音楽療法士も行動療法士も、Medicaid Waiverというプログラムによりサービスを受けているクライアントを対象に、各家庭やデイプログラムといった、コミュニティーをベースに活動しています。
私の行っているデイプログラムには2種類あり、1つ目はワークショ
ップといわれる作業所(ラベルを張ったり、部品をつなげたりする仕事)を設けた施設、そして2つ目は学校のようにクラスに参加する施設です。1日が終わると、皆自分の家へと帰宅します。家族と住んでいる人もいれば、ルームメートと一緒にアパートを借りる人もいます。必要に応じてスタッフが配置され、24時間交代制という所も少なくありません。さて、Medicaid Waiverについて少し説明をしたいと思います。このプログラムは、施設に住むのではなく、家やコミュニティーをベースとした自立性を重んじ、安全な限りなるべく制限のない環境で生活するために、州と国からお金が出るというシステムです。そのため、コミュニティーに出て色々な人と出会ったり、色々な事に関わりを持ったり、自立し、スキルを得たり、ということを非常に大事にしています。誰でもこのプログラムを受けられるのではなく、いくつかの必要条件を満たしていないといけません。とても実用性のある優れたプログラムのように思えますが、個人的には疑問点もあります。プログラムを受けられるようになると、ケースマネジャーという人が各クライアントにつき、クライアントや家族が望むサービスをコーディネートしていきます。リストに載っているプロバイダーからどこがいいかを決め、連絡をとります。ここで、クライアントや家族が音楽療法をここの会社から受けたいと言うと、音楽療法のサービスが始まります。ここでの疑問点は、音楽が好き(または好きだろう、いつもラジオをかけている)からという理由のみで、または、プログラムのお金・時間に余裕があるから何かアクティビティーをさせたいという理由で音楽療法が選ばれる可能性もあるという所です。実際にクライアントや家族に会い説明ができる場合もあれば、もう決定したという事で、早速セッションに行け、と言われる事もあります。まだ会った事もなく、ただなんとなく説明されただけの状態で、ケースマネジャーよりゴールやオブジェクティブをメールで送れと言われた事がありました。たとえ後で変更ができるにしても、これにはさすがに驚きました。
プログラムが始まると、3か月に1回のチームミーティング、そして
1年に1回のアニュアルミーティングというのがあります。ここでは、
クライアントの現状やゴールに対する進歩・向上、そして問題があれば話し合いをします。このミーティングには、家族(または法定後見人)ケースマネジャーの他に、デイプログラムや住居のコーディネーターと呼ばれる人たちが参加をします。もちろん、音楽療法士やレクリエーション療法士、行動療法士も(クライアントによりどのサービスを受けているかは異なりますが)参加します。ここでの疑問点は、毎日一緒にいるデイプログラムのスタッフや住居のスタッフが来ないことです。療法士達がミーティングではクライアントに一番近い存在となりますが(家族と一緒に住んでいない場合)、会えても週1~2回です。スタッフが恐らく状況を一番良く知っているはずなのに、その人たちは偶然そこにいない限り(家でミーティングが開かれる場合)は出席しません。働いている時間数や場所に制限もあると思うのですが、とてももったいない事だと思います。最近では、クライアントの予算の大きな見直しが行われています。過去のミーティングで行われた質問などをもとに、アルゴレベルと呼ばれる数値を出し、それに基づいて予算が出ているようです。アルゴレベルが高いほど行動や医療のニーズが多く予算は大きくなっています。最後の疑問点ですが、これだけの理由で予算が決定されていいのかという事です。人数も金額も大きいので、ある程度のシステム化は仕方がないと思います。ただ、本当にセラピーを受けるべき人が受けられなくなり、予算が余る人は余っています。デイプログラムに行けばかなりのお金がかかりますし、24時間体制(またはデイプログラムから帰ってきてから朝まで)の住居のスタッフにもかかります。それでも足りず3人で住むことになったクライアントもたくさんいます。このプログラムの目的であるコミュニティーへの参加やセラピーの分はありませんし、スタッフと1:1の時間も持つことはできません(そのためには最低2人のスタッフが必要)。家にいるクライアントはどうでしょうか。(家族にもよりますが、)家族と一緒に色々なアクティビティーをする事が可能です。その上、住居のスタッフにかかるお金などをさらに他のサービスへと回す事ができ、余る場合もあります。もう少しうまく予算が回るようになる日を待つのみです。Medicaid Waiverの疑問点もいくつか挙げましたが、音楽療法自体に州・国からお金が出るということはまだ日本ではありませんし、より多くの方々に音楽療法を知ってもらうという面でもとても大切なプログラムだと思っています。
音楽療法のセッションはすべて1:1で、家、オフィス、またはデイ
プログラムで行われます。長い期間(年単位)をかけてクライアントと
知り合えるのは、初めての経験です。一人ひとりについて時間をかけて知り合えば知り合うほど、セッションの時間が好きになります。最初は(とはいえ、半年近くかかった人もいましたが)前の療法士との移行で不安になったり反応を示さなくなったりするクライアントもいました。蹴られたり物が飛んできたり、唾をはかれたり、髪をひっぱられたり、色々ありました。その頃は、「自分のせい」「何かしてしまったのか」等、自分に負い目を感じる事もよくありましたが、とにかく何があっても毎回行く、迎えに行く、と決心しました。いつか必ずその時は訪れるもので、それも知らないうちに起きている事もあり、今ではいい思い出になっています。この発達障がいのポピュレーションは、子どもは学校の授業や実習でたくさん学びましたが、大人はあまり経験がありませんでした。大学生の頃、実地見学で重度の発達障がいの方々のセッションを見学し、何年もかけて首を少し横に動かせるようになるように療法士の方たちがセッションをしていらしたのをとてもよく覚えています。かなり根気の入る仕事だと思いましたが、実際私が将来同じような方たちとのセッションをするとは考えていませんでした。今あのセッションがもう一度みたい、勉強したい、という思いでいっぱいです。ただのアクティビティーにならないためにも、一人ひとりの生活に何が必要か、私に何ができるのかを日々、試行錯誤しています。最後まで読んでいあただき、どうもありがとうございました。金光 美貴子
(参考http://www.in.gov/gpcpd/files/ConsumerWaiverGuide_2009.pdf)
[編集後記]
伊賀音楽療法研究会でも、東日本大震災復興支援チャリティーコンサートを開催することになりました。このたびの大震災では、音楽家のみならず、漫画家や作家までもが、被災地支援に乗り出しています。あらゆる文化活動が支援することは、すなわち、その国の文化水準のレベルを指し示しているように思います。特に心のケアにおいては、音楽をはじめとして、文化・芸術が役に立てることがたくさんあると思います。(伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室)
伊賀音楽療法研究会 http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm
メディケイドについて:
メディケイド(Medicaid)は、アメリカ合衆国の公的医療保険制度の一つ。もう一つの公的医療保険制度であるメディケアとともに1965年に創設。(Wikipedia)
KAZOE-UTA~Counting Number Song ~/池田綾子 feat. Jesus Lifehouse International Church Singers (oumanohinbe)
1 2 3 いろいろの数え歌 – 美幌音楽人 加藤雅夫
┗ http://masaokato.jp/2010/01/23/155138
音楽療法 カテゴリのアーカイブ – 美幌音楽人 加藤雅夫
┗ http://masaokato.jp/blog/music/music-therapy
加藤 雅夫
@bihorokato 北海道美幌町
みなさま、イランカラプテ!日本と世界の人々と共に“平和心”を大切に育てる事が私の願いです。 Guitar Mandolin Music 美幌音楽人
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「ありがとう音楽療法士金光美貴子さん! 頑張れ日本!」
加藤 雅夫(bihorokato) on Twitter
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