世界の音楽療法の情報 (2014.11.10)

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伊賀音楽療法研究会からのメールマガジンです。(2014.11.10)

「世界の音楽療法の情報」 (2014年 11月10日)
“Information of music therapy in the World” (November 10, 2014)

JMTSPアメリカ音楽療法だより (102)

はじめまして!兵庫県神戸市で音楽療法士をしております 山口(岩本)伊織と申します。この度は素敵なご機会を頂きありがとうございます。

私は学部生として米国大学で音楽療法を学び、インターン終了後帰国しました。気が付けば早くも10年という月日が経っており英語力の衰えにもすっかり慣れてしまった今日この頃です。帰国後は介護老人保健施設・デイサービスなどで高齢者を対象とした音楽療法、また各ご家庭に出向き小児を対象とした音楽療法も実施させていただいております。その他にはヴァイオリン講師のアルバイトと色々なご縁をいただき、忙しくも楽しい毎日を送っております。そんな忙しい毎日ではあるのですが、あることがきっかけでNPO法人COREnnection(コアネクション)を立ち上げる事となりました。今回はこのNPO法人(若年性認知症の方々の支援)の活動について主に書かせていただきます。いつもの「音楽療法」の記事とは少し違う趣向になるかと思いますが最後までご一読いただけると幸いです。

帰国後すぐに音楽療法の仕事に恵まれ、約10年間介護老人保健施設・デイサービスで音楽療法士として勤務しております。約5年前から若年性認知症の方々と出会う機会をうただきました。定義では18歳~64歳で認知症を発症した方の事を指しますがやはり50代~60代前半の方が多いように思います。現在の日本の制度では若年で認知症を発症したとしても受けられるサービスは高齢者ベースのサービスのみです。実際は若年性認知症を受け入れてくれる施設やデイサービス等を見つけるだけでも至難の業です。私がNPO法人の立ち上げに至ったのは若年性認知症の方を受け入れる数少ない施設に勤務させてもらっていたことが大きな原因だと思います。

私が勤務するデイサービスは神戸市内でも山の方にあり、古い一軒家を利用したなんとも風情豊かな施設です。畑はもちろん、庭にはヤギもいるという衝撃的な状況に初めて訪れる方はびっくりされます。そんな施設ですから音楽療法だってとってもユニークです。炬燵で寝ながら参加する方もいれば、庭でする事もあります。この開放的な雰囲気も手伝って、又「来るもの拒まず」というモットーなので結果的に若年性認知症の方を今まで5名受け入れております。男女差は男性3:女性2、年齢は46歳の方が一番若い方でした。

音楽療法をさせていただく上でも、また介護職の方と一緒にレクリエーション活動を提供させていただく場合でも高齢者と40代、50代、60代前半の方との合致点、もしくは妥協点を探ることは容易ではありませんでした。例えば音楽療法では40代の方とは別室でギターを用いたセッションを個別にさせていただいた後に、高齢者の方に1曲披露するといったような具合で行っておりました。また、女性は「高齢者のお世話係」「デイサービス内での掃除係」といったような役割を比較的容易に見つけることが出来たのに対し、男性の役割探しというのはとても難しいものでした。男性用に外部から簡単な作業や仕事を得たとしても、介護サービスを受けておられる時間なので報酬を受け取ることが出来ないという点でも非常に心苦しい思いをしました。

そしてもう一つの出会いは私が同じく勤務する介護老人保健施設での同僚(ナース)のご主人との出会いでした。彼は42歳でアルツハイマー型認知症を発症し、現在47歳です。出会った当初は自営業を廃業された直後でしたが施設の計らいもあり、外回りの簡単な清掃などの掃除係として障害者雇用枠でなんとか仕事を継続されておりましたが、病状の進行とともに一人では仕事が出来なくなりやむなく解雇となりました。しかし、誰かがそばについてあと少しの手助けがあればもう少し継続できたのに…と悔しい思いでいっぱいでした。元バンドマンの彼とは一緒に個別セッション(音楽療法)をさせていただいていたのでこの悔しい気持ちはなおさら強いものになりました。

同僚でもある奥様はよくこのようなお話をされていました。「解雇後も主人は職安に通い仕事を探していましたが雇ってくれるところはみつからず、主人は私によく、「ごめんな苦労かけて、俺は働きたいんやでも働くところないんや」と泣くことのなかった主人が泣いていました。主人と同じ位の年代で働いている方を見るといまだに主人と重なり涙がこみ上げてくる時があります。元気で働いている事がどんなに素晴らしい事か。」

40代、50代は働き盛りの年代です。特に多くの日本人男性にとって「働くこと」=「生きること」と考えられているように思いますのでこの年代で認知症になるということはとんでもなく大きな打撃を受けることになります。心的なショックはもちろんですが働き世代ゆえの子どもの問題、住宅ローンの問題等もでてきます。高齢世代とは異なる「家族との関係」「お金」「支援制度」という問題が一番深刻だと言われています。残念ながら多くの認知症は進行性のものですから病状は進行しますので、その度合いによって受けられるサービスがあるのが理想なのですが難しいのが現状です。しかし40代、50代の方が止むを得ず介護サービスを受けるとなると80代、90代の方と一緒に受けるしか方法はありません。これが若年性認知症初期の方々にとってどんなに屈辱かまた受け入れ難い事か想像は容易にできます。

前述した私が勤務するヤギのいるデイサービスでも若年性認知症の方を受け入れてはおりますが高齢者・若年者同時に最良のサービスを提供することは不可能です。「この現場で起きているジレンマを何とかできないだろうか?」「今のシステムでは当事者も介護者も unhappyになってしまっている…なんとか出来ないかな?」「認知症というだけで既存の高齢者を対象としたサービスしか受けられない現状をなんとか出来ないかな?」というなんとも安易な考えのスタートではありましたが多くの仲間に支えてもらいながら昨年10月にNPO法人COREnnectionを設立し、4月より活動スタート!となりました。お金も人もゼロからのスタートですのであまり大きな目標は掲げられませんがまずは若年性認知症初期の方への就労支援を行っていきたいと思っております。「仕事」に来ていただく場なのであえて「会社」としております。また出来るだけ様々な取り組みが出来るよう非介護保険事業として行っております。

社名でもある COREnnection (CORE X Connection)は造語です。個々の「心」「思い」「力」(CORE)が繋がること(connection)で大きな可能性が開かれるよう願いを込めて造語を創り名づけました。残念ながら第一号の仲間になっていただきたかった同僚のご主人は病状が進行し「就労」という支援が当てはまらくなってしまいましたが、現在ボランティア数名と一緒に「仕事」作りに奔走しております。基本的には参加してくださる当事者の方の「出来る事」に焦点を合わせての「仕事」を考えておりますが、主な収益事業としてはペーパークラフト、またレザークラフトの製作販売を考えており、この秋から販売開始いたしました。数年後には認知症の方も働けるカフェ兼ショップを開店したい!と夢をもちながら仲間と取り組んでおります。今冬から神戸市にも協力いただき当事者の方へのアプローチを開始する予定です。まだまだスタートしたばかりですがもし良ければ私たちの活動をHPやフェイスブックページ等でご覧いただければ幸いです。
http://corennection.com/index.html
https://www.facebook.com/corennection

このような就労支援に手を出す音楽療法士は異色かもしれません。今振り返ると「音楽」に縛られず色々なアプローチの有り方を教えてくださったスーパーバイザーのお陰では?と思っております。大学卒業後6か月間のインターンシップでは本当に様々な事を経験し、教えていただきました。中でも60代のアルツハイマー患者さんと一緒にMOMAに行った際に近代絵画を見て “I can do it!”と言い、その後個展をし絵画の販売までするようになったことが今でも鮮明に記憶に残っております。音楽療法士として学んだアプローチをベースに若年性認知症初期の方の「今できる事」に寄り添っていきたいと思っております。

とても長い文章となってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。神戸の六甲山では木々も少しずつ紅葉しております。私が大学時代を過ごした New Englandの紅葉もきっと綺麗でしょうね…。季節の変わり目、皆様どうぞお身体ご自愛くださいませ。また学会等でお会いできる日がありますよう楽しみにしております。この度はありがとうございました。

[編集後記]
10月号でインフォメーションさせていただいた、音楽療法ネットワーク三重創立20周年記念講演会が、阪上正巳、岡崎加奈ご夫妻をお迎えして、10月26日に津市センターパレスにて開催されました。 午前は阪上氏による「統合失調症対象の音楽療法」と題した講演でした。音楽療法を取り入れている医師の立場から、2つの貴重な症例報告があり、私たち音楽療法士に期待される役割をお話いただきました。 そして午後は、岡崎氏によるワークショップを交えての講演「既成曲を即興的に活用する技法」でした。既成曲を移調したりちょっとしたアレンジを加えることで、身体が動いたり、集中を促すことが出来るといった、対象者に寄り添う手法を学びました。 ご夫妻そろってお互いの講演を聴講し合う姿もほほえましく、私たちにとっても充実した1日講座となりました。(よ)

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関連動画

若年性認知症 就労支援 NPO法人 COREnnection(コアネクション) ロング版 – YouTube

FAAVO兵庫 “神戸初”若年性認知症「職場」創造プロジェクト への思い – YouTube

関連サイト

NPO法人COREnnection of COREnnection
http://corennection.com/

認知症への取組み|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/

みんなのメンタルヘルス|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/

関連エントリ

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