世界の 音楽療法の 情報 (2014.8.10)
- 2014年08月10日(日) 19:10
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伊賀音楽療法研究会からのメールマガジンです。(2014.8.10)
「世界の 音楽療法の 情報」 (2014年 8月10日)
“Information of music therapy in the World” (August 10, 2014)
伊賀音楽療法研究会メールマガジン8月号(No.157)
[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(99)「世界音楽療法大会2014に参加して」
こんにちは。長江朱夏です。8月の原稿を担当させていただきます。本メルマガへは今回で2度目の投稿となりますが、以前のことについては今や遠い昔の記憶となり、いつ頃だったかも定かではありません。。。今回は、世界音楽療法大会 ─The World Congress of Musc Therapy 2014─(以下世界大会)参加に伴っての発表内容の報告と現地レポートです。私の自己紹介は、原稿の終わりに掲載させていただくとして、早速本編へ。Event Title:The World Congress of Music Therapy 2014 in Krems, Austria Dates: July7-12,2014 Place: University of Applied Sciences Krems, Austria
6月号にて、小沼さんが世界大会に向けてのオーストリアでの音楽療法事情などを記事にまとめてくださったのは、皆さんの記憶にも新しいかと思います。私自身、現地入りする前に多少の知識は・・・と思っていながら、なかなか時間が追いついていなかったので、非常に勉強になりました。
さて。日本から旅立って約20時間。長年憧れていた音楽の都ウィーンへ到着。空港からホテルまでに利用したタクシーのおじさんは、ラジオでクラシック音楽を聴きながら鼻歌を歌っていました。さすがウィーン!と勝手ながらの感動を胸に、世界大会の一週間が幕を開けました。
世界大会は、今回で14回目だそう。初回はなんと、1985年のイタリア開催までさかのぼる。この当時、今から約30年前の日本(昭和60年頃)はというと、音楽療法という言葉自体一般的に知られていなかったことと思います。その一方で、世界では国境を越えた仲間の集まりが開催されていたのです。まだ先駆けともいえた時代の中で、世界では、横のつながりと、知識を「深める」、情報を「発信する」という動きが、既に音楽療法の分野に生まれていたのですね。
オーストリアで開催された今回も、世界中から音楽療法士と音楽療法関係者が集まり、学びの刺激と交流、そしてとにかく活気に満ちた一週間でした。最終的な集計は公開されていないので、2014年3月に公表された情報を紹介すると、参加者は45か国から650名が集まり(over 650 participants from 45 countries)、プレゼンテーションは全部で400本以上(more than 400 presentations)。ペーパープレゼンテーションだけでも207題とう数が行われました(207 paper presentation topics)。発表者としての日本人の名前も目立ちました。日本人と言えど近頃は、世界(アメリカ、ヨーロッパ各地など)に活動拠点が置いて活躍しているのだということも、改めて気づかされました。これも世界大会ならではのことですね。
期間中は、私もできるだけ多くのプレゼンテーションへ出席。沢山の選択肢の中から聴講するものを絞り込むのはなかなか大変な作業でした。中には、今の自分が必要としていたような内容に出会うこともあり、そうした時の充実感とワクワクは特別でした。様々な分野の専門的な話はもちろん、世界各国で行われている音楽療法の実際に触れることができました。
【プレゼンテーションについて】
私は今回、ペーパープレゼンテーションの発表者として参加する好機に恵まれました。発表は、最終日の朝一番というハンデもあり、そして無名である私の枠は閑散としたものでした。呼び込みのためにピアノを演奏したことで、音楽に引き寄せられて同席してくれた方も数名。貴重なオーディエンスに感謝しつつ、本番に臨みました。内容は、現職である音楽療法推進センターMOYO「もよ」(以下MOYO)から、臨床をもとにした発表をまとめたものでした。実は、MOYOの世界大会での発表は今回で2回目。前回の韓国大会では、私の先輩セラピストである渡辺眞由子が、MOYOの先駆的な体制 について発表していました。以後、日本音楽療法学会の関東支部学術大会でも同じ内容を発表しています。
今回のプレゼンでは、音楽療法の効果についてを調査する形で取り組みました。MOYOは児童向けのサービスを行う一方で、母体となる社会福祉法人まつど育成会が行う成人向けのプログラムも実施しています。クライアントの支援と音楽療法の連携について、臨床の実際に踏み込んだ内容を掲げたのです。タイトルは、Ripple Effects of Music Therapy Work for Clients’ Lives(音楽療法の取り組みが起こす波紋的効果)。音楽療法場面でのクライアントの変化が、日常生活にどのように表れてたのか・・・という音楽療法士が強く興味を持ちながらも、なかなか追い切れない全体像を調査しました。
背景: 日本の社会福祉の状況をあまりご存知でない方の為に、背景を少し紹介をさせていただきます。以下、プレゼンテーション原稿(法人統括施設長のインタビューより)より。
日本は2005年以降、障がい者の自立を支援する観点から、法律の整備が進み、入所型の施設からグループホームへ、障がい者の暮らしの転換が打ち出されている。欧米の障がい者の在り方からすると随分と遅れていると感じられるかもしれません。しかし、自宅で暮らす人たちの居住の在り方も合わせて考えると、日本ではグループホームは相当に不足しています。したがって、まだまだ、入所施設は必要となっており、入所施設が機能を明確にして運営していくことが求められるようになってきました。まつど育成会は「通過型」と表現し、グループホームや一人暮らしをする前段階、もしくは行動障がいのある方たちの状態の整理を目的とし、「トレーニング機関」として、2004年に運営を開始しました。まつど育成会では、「誰もがひとりの人として尊重される権利を有していることを意識し、その持てる力を最大限に発揮して生きることを支援する」という理念のもと、“あたりまえの暮らしの現実に向かう場所”を提供する支援を行っています。入所者は皆18歳以上。必ずしもハッピーな体験を送ってきた人ばかりではなく、周囲からの誤解や理解の不足、生活体験の不足によって心を閉ざしていたり、自信を喪失したりしています。日本はまだまだ、障がい者に対してオープンな環境ばかりではないからです。自立のための「トレーニング」を進める中で、生活リズムや環境調整が整い、クライアントの状態が落ち着いてきた頃、次のステップとして「心を解放する」ことへの支援が模索されていました。その矢先、音楽療法との出会いは衝撃的であった。言葉でのコミュニケーションが困難な彼らが、音楽に応え、反応し、音の中で対話していた。この様子を目の当たりにし、「トレーニング機関」としての運営方針と「心を開放する」ために音楽療法を支援チームに加えたいという意向が高まりました。
さらに、入所型の施設のメリットは生活の状況を把握できることにあり、療法士と生活状況が確認できることで、音楽療法とのかかわりが、生活上にもたらす「効果」についても確認ができるのではないかという思いに広がりました。そして、2009年に音楽療法が法人の事業として加えられ、法人チームの取り組みが開始されました。
このプロジェクトでは、24時間体制の生活支援、日中活動プログラムの支援そして音楽療法の連携と情報共有により、クライアントの過去5~10年という歳月を追いながら全体像を掴むことが可能となりました。2009年に音楽療法のプログラムが発足して以来の集大成とも言えるプロジェクトでした。2人のクライアントにケースを絞り、チームでのミーティングを重ねました。チームメンバーは、施設長、生活支援員、日中活動の支援員、音楽療法士。膨大な生活支援の記録と音楽療法のセッション記録、写真やビデオをもとに時間軸を追ったクライアントの成長記録表を作りました。この表は、クライアントに起きた変化や出来事を時系列に並べたものですが、支援と音楽療法相互の関連性を見事に映し出してくれました。
実は私は、MOYOに入職してまだ1年強。ですから、第三者という立場で調査をし、今回の発表をまとめたことになります。自分が担当したケースをまとめるのとは違い、客観的にプロジェクトを進められた初めての経験でした。その過程の中で、クライアントの変化を記録やビデオで目の当たりにし、音楽の持つ底知れない力と素晴らしさを実感しました。ミーティングでクライアントの姿をビデオで見たチームスタッフは、「落ち着く、生活を安定させるなどは支援で生み出していけるが、心が湧き立つ体験は音楽だから生まれる。人の生活は、そうした心が動くことで豊かになる」と感想を述べてくれました。
クライアントに響く音楽だからこそ、本人すら気づいていない「自分」に音が触れ、心に一滴のしずくを落とします。その時に起きた小さな波紋は、次第にその存在感を大きくし、支援というサポートを受けながら少しずつ浸透して行く。。。 大人になってからでも成長が止まるわけではないという認識が、支援の仕事の励みと歓びになっています。音楽療法室の扉の外でも生き生きと、そしてより豊かなクライアントの生活が広がっていくことは、音楽療法士としてこの上ない幸せです。これからも、より豊かに生きるための雫を、一人でも多くのクライアントの心に届けていきたいと思います。
チームとして取り組み、音楽療法の効果を客観的に実証することは、近年様々な現場で実践されています。海外では当たり前のように行われていることも、日本の中ではまだまだ発展途上といえますが、その分、これからの発展と広がりは、一層楽しみな私です。次回、第15回世界音楽療法大会開催は日本です。この機会が、日本国内の音楽療法の底上げになるよう、がんばりたいですね。
【おまけ】
余談ですが、世界大会の開催地となったKrems(クレムス) は、ウィーン市内から特急電車で1時間ほど離れた小さな街。実は知る人ぞ知るワインの名産地。お酒の味がほとんど分からない私でも、一口でその絶品さに感動しました。ワイン好きの上司は、何故今までオーストリア産やクレムス産のワインを知る機会がなかったのだろうとショックを受けていましたが、それもそのはず、Krems では、ワインの大量生産をしないそうです。ですから、Krems 産のワインが国外への流出が皆無に近いのだとか。ワイナリーを訪ねてみても、古くからぶどう畑を守ってきた家族が、代々自分たちと、顧客のために作っているといった雰囲気でした。ワイン好きの方には是非、一生に一度、お試し頂きたいです!【自己紹介】
長江朱夏(ながえなつ)MA, NRMT, AMT, MT-BCロヨラ大学ニューオリンズ校音楽療法学士課程終了。ニューヨーク大学大学院音楽療法修士課程終了。米国公認音楽療法士。ノードフ・ロビンズ音楽療法および分析的音楽療法ディプロマ終了。ニューヨークにて、フリーランスの音楽療法士として活動。2009年に日本へ帰国。愛知県名古屋市にある精神科の病院にて音楽療法士(常勤)として勤務。2013年からは、現職、音楽療法推進センターMOYOへ。桐朋学園大学、長野県看護大学非常勤講師。関連リンク
社会福祉法人まつど育成会 http://www.pinecone.or.jp/
音楽療法推進センターMOYO http://www.pinecone.or.jp/jigyosho_moyo.html音楽療法推進センターMOYO(もよ)は、社会福祉法人まつど育成会の一事業として2009年に発足。法人事業として設立された目的としては、地域に根付く活動のために、まず音楽療法士の社会(身分)保障をする目的があった。更に、社会福祉事業として多機能型児童デイサービスとして認可を受け、音楽療法に特化したサービス提供が可能となった。これより、障害者手帳を持つ利用者は、1割負担の利用料で音楽療法が受けられるという仕組みが可能となった。
[編集後記]
今月は、偶然ですが大学主催の講座を2つご紹介しました。大垣女子短大では初来日の講師を招聘され、また聖徳大学は音楽療法コースの講師陣による「音楽の力を探る」をテーマとした講座、どちらも魅力的な内容ですね。お近くの方、ご興味のある方はご参加ください。[伊賀音楽療法研究会メールマガジン]
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伊賀音楽療法研究会 – 伊賀市社会福祉協議会
www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm
音楽動画
Danube Music Festival 2007 – Lantos, Apap & EVA Quartet – Live at the Krems Church – YouTube
関連サイト
Japanese Music Therapy Students & Professionals (JMTSP) – Ameba
ameblo.jp/jmtsp/
Japanese Music Therapy Student & Professionals
www.geocities.jp/jmtsp2004/
World Federation of Music Therapy
www.musictherapyworld.net
World Congress of Music Therapy 2014
www.musictherapy2014.org
World Congress of Music Therapy 2014 | Facebook
www.facebook.com/events/439257416150250/
関連エントリ
音楽療法の世界大会について
masaokato.jp/2014/03/12/001508
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