JMTSP アメリカ音楽療法だより(90)

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伊賀音楽療法研究会から世界音楽療法の最新情報が送られてきた。

Private Practice
Cadence – Music Therapy in San Francisco

伊賀音楽療法研究会メールマガジン9月号(No.146)

[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(90)
 皆様、こんにちは。今月の伊賀音楽療法研究会メールマガジンの担当の漆畑百合子です。約、一年5ヶ月前にサンフランシスコに引っ越し、個人で教室を始めました(アメリカではこのような事業をPrivate Practiceといいます)。今回は音楽療法の仕事を立ち上げるために経験したこと、学んだことを書かせていただきます。
 サンフランシスコといいますと都会で、人がたくさんいて仕事もたくさんあるというイメージですが、実は音楽療法士を雇う会社や施設はほとんどありません。サンフランシスコとその周辺の、いわゆるベイエリアと呼ばれる地域で働いている音楽療法士の多くは、Private Practiceを開いています。 家庭のある世帯が多く、音楽療法士のニーズは旺盛なのですが、カリフォルニア州(以下より州とする)の予算カットなどであまり音楽療法に対する支援は得られていません。 数年前にこのメールマガジンで担当させていただいたときは、州からの資金で0?3歳までの発達に遅れのある子どものための、早期介入プログラムの一つとしてサクラメントで音楽療法の仕事をしていたことを書かせていただきましたが、残念ながら州の財政悪化に伴い、音楽療法のサービスはそのプログラムからほぼ100%カットされてしまいました。そんなこともあり、以前からベイエリアでは仕事を立ち上げ、成功したという人たちの話を聞いているうちに私も自分で始めようと決心しました。
 まず、アメリカで音楽療法を個人業として始めるためには、住んでいる州で決められた手続きをします。私の場合は個人で始めたので個人事業主を選択しました。次に会社名(Fictitious Business Name)を付けることにしたため、その手続きも必要でした。その場合、まずはその会社名が事業所を置こうとする自治体で使われていないことを確認します。カリフォルニア州では、混乱を避ける目的で、同じ自治体で同一の会社名は登録できないことになっています。登録後、地元の新聞社に問い合わせ、新規事業の開始を伝える書類を送ります。その後4週間に渡り、紙面に新規事業開始の告知が掲載されます。その記録を必要な書類と共に監督官庁に提出すると、2?3週間ほどで営業許可証(Business Registration)が送られてきます。他の州では手順が少し異なると思います。
 事業を始めるための許可は簡単に手に入るのですが、大変なのはそこからどうやってクライエントに音楽療法の情報を知らせるか、そしてどんなクライエントを対象にビジネスをしていくのかということです。まずこのサンフランシスコ周辺で求められているものは何かということを独自に調査しました。その結果、障がいを持つ子どもたちのためのサービスがあまりないという事を知り、今まで一番経験を多く担当していたのが自閉症や言語の遅れがある子供たちだったため、まずは子供たちを中心に音楽療法のサービスを広げていく事にしました。音楽療法の他に、ピアノの個人レッスンも始めました。ピアノの先生は沢山いますが、障がいを持つ子どや5歳以下の子どもは受け入れない先生がほとんどです。障がいを持つ子どもの親たちは普通の子供たちと同じようにスポーツや楽器を弾かせたいという思いがあります。ピアノのレッスンは年齢やスキルを問わず、一人一人のニーズに合わせたレッスンを提供する事にしました。それらを決めた後はウェブサイトや名刺?パンフレットを作りました。今は誰に会ってもすぐに説明できるよう、名刺とパンフレットは、どこに行くときも常に携帯するようにしています。それから障がいを持つ子どもたちの親御さんのサポートグループや情報センターなどに、音楽療法について講演をすることは可能か問い合わせました。実際、検診で行った病院で知り合ったお医者さんにたまたま音楽療法について話をしたら、自閉症の患者さんをよく見るとのことで音楽療法の情報を教えてほしいという事もありました。ここ、ベイエリアには幸いにも音楽療法士の集まりなどが頻繁に行われており、そのような情報交換の場には欠かさず参加しました。それから知り合いの言語療法士からの紹介で、何人かのクライエントを受け持つ事にもなりました。私の場合、新しい街で始めたのでとにかく人と知り合いになるためにいろいろな方に連絡し、ネットワークを広げる事から始めました。
 実際にクライエントを受け持つ前にする事は本当にたくさんありました。まず、セッションに必要な楽器、子どもたちが興味を示しそうな小道具(絵カード、絵本、歌遊びに使うスカーフなど)を一通り揃える事、音楽療法のサービスに同意するという契約書(Policy and Procedure Form)やアセスメントに使う質問用紙 (Parent Intake Form)、セッション?レッスンの請求書(Invoice Form)などを作成する事。それから損害保険 (Liability Insurance)に入ることも必要です。ここベイエリア、特にサンフランシスコには数人の音楽療法士しかいないこともあり、音楽療法の知名度というのはすごく低いのが実状です。去年の9月頃、障がいを持つ子どもたちと家族のためのエージェンシーで音楽療法について話をしたところ、とても興味を持っていただき、同年12月にはワークショップを開催し、今年の3月には一年に一回開かれるカンファレンスのトピックスのひとつとして音楽療法についての講演をさせていただきました。この講演では音楽療法とは何か、どうして音楽が効果的なのかという説明をしながら、私が子どもたちと行うアクティビティをいくつか紹介し、それを実際に親御さんたちに体験してもらいました。それにより、実際にセッションで何が行われるのか、何が目的でどんなゴールをターゲットにそれらのアクティビティを使うのかを伝える事ができました。その他にも家族が家で使える歌遊びやテクニックなどの紹介もしました。講演には大勢の方たちにお集りいただき、本当に感激しました。このイベントではブースを借りそこでもまた、たくさんの方々とお話することができ、多くの人たちに音楽療法を知ってもらう事ができました。障がいを持つ家族の他に特別支援学校、言語療法士、作業療法士などのプロフェッショナルの方たちと知り合う機会もでき、ネットワークを広げるという意味ではとても良い経験になりました。
 クライエントが一人、二人とつき始めてからは、ほぼ口コミで新しいクライエントが増えていきました。サポートグループで知り合った方に音楽療法の事を聞き、興味を持ってくれた方や、兄弟や近所の子どもにもピアノのレッスンを教えてほしいなど自然と自分のビジネスが広がっていきました。その他、保険で音楽療法をカバーできたという方がいて、そこからまた興味を持ってくれた方もたくさん増えました。今では週にクライエント、ピアノの生徒さん合わせて25人ほどを受け持っています。
 新しい街で事業を始めるというのは簡単な事ではなく、実際、最初のクライエントがつくまでは数ヶ月かかりました。まだ仕事がない間はすごく不安になり、悩まされる日々が続きました。そんなときはあまり悩まず、もっと自分のために時間を使うべきだったと今では思います。実際に何人かクライエントを担当するようになると、本当にやる事がたくさんあります。クライエントをよく知るまでには時間がかかりますし、プラニングをする時間も必要です。クリニックで雇われていた時は、会社にいたオフィスマネージャーがスケジュールや経理などの事務をしていたため、最初は慣れるまでオロオロしながら何をするにも時間がかかりました。更に、クリニックでセッションをしていた頃はクライエントが事務所に来てくれましたが、今は自宅訪問を行っているため一軒、一軒クルマで出向き、そのつどトランクに詰まったたくさんの楽器を運び、セッションを終えたらまたそれをクルマに入れ、家に帰ったらレポートを書く…と行った具合に骨の折れる作業が続きます。Private Practice をするようになり、セルフケアの重要さを改めて思い知らされました。この仕事を始めてからは大変な事もたくさんあり、そしていい出会いもたくさんあり、本当にいろんな事を学ばされる一年でした。ビジネスオーナーとしてはまだまだ未熟ですが、これからもがんばって、より多くの人たちに音楽療法のサービスを提供できたらいいなと思います。最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。もし興味がございましたら私のウエブサイトもご覧ください。
www.cadencemusictherapy.com 漆畑百合子

[編集後記]
 9月6日から8日まで、日本音楽療法学会米子学術大会が開催されました。いつものように大挙して伊賀音楽療法研究会の会員も米子へ向かいました。今大会は、当研究会から2名が、研究・事例の報告をさせていただきましたので、来月号にて詳細を報告いたします。

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