Early Interventionにおける音楽療法(高井 暁)

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伊賀音楽療法研究会(三重県伊賀市)から「日本と世界の音楽療法情報」が送られてきました。

伊賀音楽療法研究会メールマガジン10月号(No.135)

[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(80)
 こんにちは、10月号のメールマガジンを書かせていただきます、高井暁です。去年の1回目に続き、2回目の記事を書かせていただきます。
 今回は、私が大学院在学中だった去年、2011年の10月から今年、2012年の6月まで行ったEarly Interventionプログラムでのインターンシップについてお話しします。Early Interventionプログラムは、Early Childhood Intervention Programとも呼ばれ、日本語では、早期介入プログラムや早期療育と訳されることが多いようです。私が居住しているマサチューセッツ州では、発達に遅れの見られる0歳児から3歳児までが、このEarly Interventionでのサービスを受けることができるようになっており、保険も適用されています。
<サービスの流れ>
1:発達に遅れがある可能性がある0歳から3歳までの子どもが医療機関からEarly Interventionへ紹介される
2:Early Interventionの専門スタッフ(ソーシャルワーカーや言語聴覚士など)が直接子どもと家族に会い、発達に遅れが見られるかどうか、見られるのであればどれくらいの遅れであるのかを調べるテスト(アセスメント)を行う。
3:テスト終了後、すぐに点数を計算し、一つでも規定のスコアを下回った場合、Early Interventionのプログラムにてサービスが受けられることを家族に伝える。
4:規定の書類を作成後、家族の希望と子どものニーズによって、サービス内容や頻度を決め(理学療法、言語聴覚療法、音楽療法など)、サービスを開始する。
5:専門スタッフ(セラピストやソーシャルワーカー)による評価(レポート)が基本的にセッション毎に行われ、必要があれば、ゴールの見直し、サービス内容の変更をする。
6:3歳の誕生日が来た時点で、Early Interventionによるサービス提供は終了する。必要があれば、子どもはその後、スペシャルニーズの学校へ通うことになる。
 発達の遅れを調べるテストは、私のいたプログラムでは、Battelle Developmental Inventoryか、Early Intervention Developmental Profile (the “Michigan”)を用いていました。このテストで、身体能力、認知能力、 コミュニケーション能力、言語能力、生活習慣能力などの発達具合を調べます。テストの構成としては、子どもに実際やって反応を見る部分と、家族に質問して情報を得、子どもの発達段階を診断する部分があります。これらの情報を全て数字化し、規定のスコアを下回ると、スタッフが、Early Interventionにてサービスを受けられるということを伝えます。
<サービス内容>
 Early Interventionには様々な専門スタッフが勤務しています。私のいたところは、非常に大きいプログラムで、100人近い専門スタッフによって構成されていました。職種も様々で、看護士、カウンセラー、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、音楽療法士などが所属しています。子どもがサービスを受けることが決まると、サービスコーディネーターと呼ばれる、それぞれの子どもの医療チームを統括するスタッフが、サービスの開始プランを作ります。どれくらいの頻度で、どんなサービスを提供すれば、子どもの発達の遅れを助けることができるのかを考え、チームメンバーとやり取りを進めていきます。目標は、規定のスコアにとどかなったエリアの能力を、次回の再アセスメントの時までに上げること、3歳の誕生日以降の学校生活、社会生活になるべく溶け込めるようにすることなので、それに沿って、サービス内容を決定します。
<Early Interventionにおける音楽療法>
 私は、最初からセッションをリードした訳ではなく、最初の1ヶ月間はスーパーバイザーのセッションを観察しながら過ごしました。割合としては、グループセッションが3割、個別セッションが7割で、ほとんどの場合は、親御さんも音楽療法セッションに参加していました。音楽療法セッションのゴールは、アセスメントの結果を見て決めます。例としては、言語を使っての表現能力の向上、身体能力の向上、コミュニケーション能力の向上などが挙げられます。
 基本的に音楽療法セッションの長さは45分から1時間で、歌に合わせて手を動かしたり(Itchy Bitsy SpiderやThe Wheels On The Busなど)、体を動かしたり(We Are The DinosaursやIf You Are Happyなど)、ダイナミクスを付けて楽器を演奏したり、他のグループメンバーと楽器を共有したりすることで、アセスメントで規定のスコアを下回ったスキルの向上を計ります。私はインターンだったので、一人でセッションを行うことはあっても必ずスーパーバイザーが一緒で、セッションが終わった後は、フィードバックを貰ったり、セッション後に私が書いた評価レポートに関してアドバイスを貰ったりしました。
 私は、週20時間のインターンシップを約8ヶ月続けて、Early Interventionでのインターンシップを修了しました。その間、スーパーバイザーとは毎週個別ミーティングをし、所属していた大学院ではクラスメートや教授と共に、別のスーパービジョンの場を持ち、常に自分のやっていることを周りと共有することで、自分の臨床能力を磨いていきました。インターンシップの最後には、スタッフ全員を対象にケーススタディをプレゼン発表し、Early Interventionで音楽療法士はどのようなことをやっているのか、その目的は何なのか、そしてその効果はどうなのか、などということについて話しました。クライアントのビデオを見せたことで、スタッフにも分かりやすかったとの評価を貰うことができ、私が時折取り入れていた、日本の遊び歌を紹介することもできました。また、私は子どもを対象にしたことがほとんど無かったので、この経験を糧に、新たな自信もつきました。日本には、アメリカと比べて、このようなサービスを受けられる場所が少ないので、もっと認知され、発展してほしいという思いを述べて、終わりとさせていただきます。読んでくださってありがとうございました。
高井 暁(たかい・あき)mt.raymay◎gmail.com

[編集後記]
 9月に宮崎で行われた学術大会に参加してきました。1日目の講習会、1講目では日本音楽の貴重な音源に触れ、2講目では病院や学校などで牧師として従事するチャプレンという仕事があることを知りました。3講目のワークショップでは身体表現について学び、4講目の松井先生の公開スーパーバイズでは「喪の作業(モーニングワーク)」という言葉と、スーパーバイザーとバイジーのやりとりを通じてそれがまさになされていくその過程を一緒に体験させていただきました。
 2日目は、伊賀音楽療法研究会(評価検討委員会)から研究発表させていただきました。「実践者派遣型音楽療法の主観的評価~ライフスタイルにおける比較からの考察~」と題し、11年間の実践の積み重ねと、昨年初めて実施した対象者へのアンケート結果から見えてきたことをまとめ、自由研究発表枠で報告いたしました。会場は立ち見も出るほどで、たくさんの方に向けて伊賀から発信できた機会に感謝しております。座長のお二方からは、私たち評価検討委員会が課題に感じていたことについても御示唆いただき、研究継続へとモチベーションが上がりました。その日は発表のために研究会のユニフォームで1日過ごしていましたので、いろんな方からお声をかけていただき、うれしい時間でした。
 3日目、米良美一さんの講演と素晴らしい歌声にたくさんの参加者とともに涙し、総会では現在行われている先駆的な研究について質問しました。会場でもホテルでも、ずっと海を見ながら過ごした3日間は、有意義な学びと癒し、そしてリフレッシュともなりました。来年もまた、何かの形で発信できるように、気持ちも新たに精進します。(文責:吉田)

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関連サイト:
Early childhood intervention – Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Early_childhood_intervention

関連エントリー:
JMTSPアメリカ音楽療法だより(高井 暁) – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/2011/06/11/125919
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