JMTSPアメリカ音楽療法だより(高井 暁)

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三重県伊賀市にある伊賀音楽療法研究会(伊賀市社会福祉協議会内)からメールマガジンが送られてきました。6月号のリポーターは、米国マサチューセッツ州で活動の音楽療法士高井暁

写真: マサチューセッツ州のチドリPiping Plover

伊賀音楽療法研究会メールマガジン6月号(No.119)

[世界音楽療法情報]

JMTSPアメリカ音楽療法だより(66)
2010年8月よりマサチューセッツ州レズリー大学(Lesley University)にて音楽療法の修士課程を始めました、高井暁です。今回は、私の在籍しておりますレズリー大学の話を中心にお話をさせていただきたいと思います。

私のバックグラウンドを簡単に説明しますと、2006年に日本大学藝術学部音楽学科を卒業後、同年、ミシガン州立大学にて音楽療法の学部に編入いたしました。音楽療法への興味は高校3年生の頃から持っており、いつかは留学して音楽療法を勉強したいという気持ちは漠然と持っていました。

日本大学藝術学部を卒業後、すぐに大学院留学という選択肢を取らなかったのは、自分に臨床経験が全くなかったことと、英語力に大きな不安があったからです。3年半、ミシガン州立大学で過ごした後、2010年1月より7月までオレゴン州ポートランドでインターンシップを行い、レズリーの修士課程に入学しました。

ようやく修士課程1年目が終わったところですが、私はレズリー大学の音楽療法プログラムがとても気に入っています。具体的な理由としては、クラスメートとの信頼関係がしっかりしている、教授陣の学生へのサポートが厚い、デパートメントがとても大きく、音楽療法以外の友人が作りやすいところです。

レズリーの音楽療法プログラムは、表現療法専攻(Expressive Therapies Division)というデパートメントの中に入っており、音楽療法以外には、Art Therapy、Dance/Movement Therapy、Expressive Arts Therapy (Intermodal)という専攻があります。学生全員が入学時に集中オリエンテーションを受け、約1週間、表現療法とは何かを経験、学習、実践しながらクラスメートや教授との仲を深めます。毎年100人以上のTherapyの学生がこのオリエンテーションを受け、その内、音楽療法は20人ほどです。

基本的に、入学した学生は2年間もしくは3年間で修士号を取得します。60単位分の授業履修が卒業の必要条件で、授業と平行しながら2年間のインターンシップを行います。1年目は週に約15時間(通年450時間)、2年目は週に約20時間(通年600時間)のインターンシップを行います。施設は、学校、老人ホーム、ホスピス、リハビリテーション施設と様々です。私は、1年目のインターンシップをカソリック系の老人ホームで行いました。スーパービジョンは音楽療法士及びLMHCと呼ばれるカウンセラーから受けることになります。音楽療法士のいない施設でインターンシップをするケースも多々あり、スーパーバイザーが音楽療法に疎い場合は、苦労することもありますが、とてもやりがいがあります。

大きな街にある学校ということもあり、いろいろなバックグラウンドを持った学生が集まるのも魅力の一つです。地理的な関係から、バークリー音楽大学やニューイングランド音楽院を卒業したクラスメートから、カルフォルニア、アリゾナ、ワシントンDC、ニューヨーク出身のクラスメートなど、いろいろな学生が集まってきます。アメリカ人が大多数(約7割)ですが、留学生もいます。残念ながら、日本人は今年私1人で、マイノリティになってしまっていますが、とても良い学校なので、もっとたくさんの日本人に来てほしいと思っています。

レズリーが大事にしている哲学は、「クライアントのことをより深く理解し知るために、自分のことを良く知る」ことです。私は、レズリーに来てからこの考え方に深く感銘し、音楽療法場面以外でもよく実践しています。特に、私たちが日常生活の中で無意識的に感じていること、考えていることを、意識的に表現し(言語的及び非言語的に)、第三者に説明することで、自分はこんなことを考えているのだ、感じているのだ、と気付くことは大事だと考えています。その過程の中で自分がストレスを感じていると気付いたら、休息を取ることが必要であるし、仲間からのサポートが必要だと思えば、周りに助けを求めることが必要だと気付くことができます。自分のことを良く知る、ということは、セルフケアにも繋がると思っています。

ボストンは、学校生活以外にも、音楽や絵画、バレエやミュージカルなど、文化の質がとても高く、充実したプライベート生活を送ることができます。学校生活はもちろん大事ですが、プライベートを充実させ、バランスの良い生活を送ることができるように、私も日々努力しています。

ボストンについて、また、レズリー大学についてご質問のある方はお気軽にご連絡ください。最後まで読んでいただきありがとうございました。(高井暁)

 
[編集後記]
この音楽療法メルマガを創刊したのが、2001年7月10日ですので、今回の発行で丸10年間発行し続けたことになります。来月号から11年目に突入するということになります。この10年間に、世界の音楽療法は様々な進化を遂げています。日本の音楽療法も質量ともに進化したように思います。しかし、10年経ってもあまり変わらなかったこともあるのではないでしょうか?日本における音楽療法の立ち位置というか、存在意義そのものは、10年前とさほど変わっていないような気もします。国家資格化も医療点数化も結果的には10年前から遅々として進んでいませんからね。

伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室
 〒518-0869 三重県伊賀市上野中町2976-1上野ふれあいプラザ3階
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加藤 雅夫
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2 件のコメント

  1. 音楽療法・・なかなか実証できないし、人によって効果がばらばらなんだと思います。そこに脳神経がからんだ難しさがあるし、心がからんだ難しさがあります。音楽を聴いて、心がすっと軽くなる、原点はここにあるんじゃないでしょうか。

    なりひら より 2011 年 6 月 12 日 17:11

  2. 持病とともに生きるなりひらさんは、すでに音楽療法士ですね。私も右目で「世界」を見て、左目で「夢」を見ています。国家資格や免許があってもなくても行動します。

    加藤 雅夫 より 2011 年 6 月 12 日 22:07

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