JMTSPアメリカ音楽療法だより(越後 友貴子)
- 2012年08月13日(月) 9:04
- カテゴリ: Twitter, お知らせ, アメリカ, ギター, マンドリン, 健康・福祉, 国際, 日本, 音楽, 音楽療法
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伊賀音楽療法研究会(三重県伊賀市)から「日本と世界の音楽療法情報」が送られてきました。
伊賀音楽療法研究会メールマガジン8月号(No.133)
[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(78)
皆様こんにちは、この度8月号のメールマガジンを担当させていただきます越後友貴子と申します。今回の記事では日本と米国における学位取得を通して経験した音楽療法について書かせていただきたいと思います。
私は高校より音楽科演奏コースに進学し、在学中に経験した自身の交通事故をきっかけに「音楽療法」の存在を知りました。それを機に大学では音楽療法を学びたいと希望し、武庫川女子大学音楽療法コース(現応用音楽)へ第一期生として入学しました。現在は以前に比べカリキュラムや学会資格制度に多少改定があるかと思いますが、在学中には音楽療法関連科目や実技をはじめ、心理学や基礎医学概論など多領域において学ぶ機会が与えられました。卒業論文では各生徒が興味のあるポピュレーション課題に対して論文作成を行い、口答発表審査合格のちに卒業が認められます。また音楽療法実習では特別支援学校、知的障害者更生施設、高齢者福祉施設やリハビリテーション病院等において指導教員のもと実習を行い、卒業時には規定科目/単位取得者に対し日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)の受験資格が与えられました。
大学卒業後の進路は様々でしたが、私は米国コロラド州立大学(CSU)修士課程のEquivalency Programに進学しました。皆様ご存知のとおりCSUでは主に神経学的音楽療法に焦点をあてているため授業では音楽領域や心理学/カウンセリング関連科目以外に人間生理学や神経解剖学が必修となっています。CSUのEquivalency programでは学部レベルの音楽療法必修科目に加え大学院レベル科目を最低32単位修了、そして筆記/口答試験審査合格のちに修士号が与えられます。またプラクティカムでは教員指導のもと各レポート/各セッションに対しとても細かくフィードバックが入るため各セメスターのプラクティカムを終える毎に前セメスターと比べて自身の成長に気付くようになると思います。さらにNMT音楽療法士と理学療法士のコラボレーションによるNMTグループがCSUに設置されているため、プラクティカムを通して実際に本場のNMTを学ぶことができます。これはとても貴重な経験なので多数の学生が大学院プラクティカムとして希望し、多くの場合は2セメスターを通して学ぶことを条件とされます。大学院では音楽療法関連や神経解剖系必修科目以外にElective科目として6~9単位を各自で選択することができるため興味のある領域をさらに探求することができます。現在は改定されたようですが、私の在学中には毎年行われるNMT Instituteが必修科目となっていたので大学院生は全員が講習会を終えNMT修了書を授与されていました。また多くの院レベルのクラスでは約60分にわたるプレゼンテーションや神経学的音楽療法に基づいた研究レポートを分析して統合させたSynthesizeレポートの提出がありました。夏セメも充実しているので興味のある科目履修もできますし、前セメプラクティカムの成績によって教授から許可が出た生徒には短期集中プラクティカムを夏に履修する機会が与えられます。私がCSU在学を通して言えることは、本当に充実したカリキュラムが組まれており、プラクティカム等でも細かくフィードバックがいただけるので確実に各セメスター自分の成長が感じられるということです。また、音楽療法のみではなく他領域における教授陣も素晴らしい先生がたくさんいらっしゃるので授業は大変ながらも毎日授業に行くのがとても楽しみで、院生活2年の間、本当に多くのことを学びました。大変なこともあるかと思いますが一生懸命勉強・経験した分、卒業の際には学んだことが確実に自分の身に付いていると実感できると思います。卒業後は米国認定音楽療法士受験資格を取得するため8ヶ月にわたりインターンシップを行いました。私は障がいを持った子どもたちと働くことを希望していたのでカンザス州ローレンス市の公立学校にて音楽療法インターンとして受け入れていただきました。インターンシップでは2名の音楽療法士(スーパーバイザー)のもとで、もう1名の音楽療法インターンと共にフルタイムとして働き、インターンシップ終了後に独り立ちができるようにスーパーバイザーより徹底的に指導をうけました。各学校には特別支援学級が設置されており、私は13校で約32名の幼稚園~高校生までの生徒を対象に音楽療法セッションを行いました。インターンシップ中には他領域療法士と共に行われるチームミーティングをはじめ各生徒のIEPミーティングへの参加、また各セッションでの収集データをもとに学期毎に行われるプログレスレポートや生徒の状況を要約したPLEP(The Present Level of Educational Performance)の作成等を行いました。さらに各高等学校の普通学級において90分にわたり「特別学級における音楽療法」というテーマのもと実践を用いて他インターンと一緒にプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーション終了後には生徒より「今まで音楽療法のことを知らなかったけれど知れてよかった」といったコメントや質問が多く寄せられ、このような活動は少しでも多くの方に音楽療法を知っていただく上でとても重要なものであると実感しました。これからもこのような活動を通して音楽療法の重要性が少しでも多くの方に認識され、今後のさらなる発展につながることを期待しております。現在に至るにおいて、留学中に多くの方より学士・修士号取得を通し日米の両教育機関で音楽療法を学ぶケースは珍しいと言っていただく機会がとても多かったため、私が経験したことをもとに皆様の今後の参考になればと思い今回記事を書かせていただきました。最後まで読んでいただきありがとうございました。記事の内容に関してご意見、ご感想等がございましたら y.echigo.mt◎gmail.comにご連絡いただけると幸いです。越後 友貴子[編集後記]
7月29日(日)、当研究会主催で毎年夏にお世話になっている小西(菅田)文子先生の音楽療法講座を開催しました。先生のアレンジによる音楽療法実践の“100曲シリーズ”は高齢者編に始まり、子ども編、大人編と昨年まで連続で出版されていますが、今年は、『精神分野の音楽療法~選曲とプログラム「大人の100曲」から~』と題しての講座でした。
講義では、1.統合失調症の概要2.精神障害を持つ人への援助を項目を踏まえ、3.精神分野における音楽療法の紹介がありました。病に深く踏み込む再構築的・分析的・カタルシス志向の集団療法から、踏み込むことをしなくても、Th・Clどちらにとっても安全安心な援助的・活動志向の集団療法まで、どのようなプログラムで行われるのかを学びました。
模擬セッションでは、病状や「大人」とはいえ多様な年齢層に合わせてどのようなことに気を付ければよいか、音づかいや最近の傾向など、楽器を使いながら教えていただきました。
講座内容はもちろん、私たちのことを見守ってくれる先生の存在は、本当に有難く頼もしいものです。
会員みんなで、学びを実践に活かしていきます。(文責:吉田)[伊賀音楽療法研究会メールマガジン]
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