JMTSPアメリカ音楽療法だより(吉原 奈美)
三重県伊賀市にある伊賀音楽療法研究会からメールマガジンが送られてきました。4月号のリポーターは、米国認定音楽療法士吉原奈美(Nami Yoshihara)。
Japanese Music Therapy Students & Professinals (JMTSP)
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伊賀音楽療法研究会メールマガジン4月号(No.117)
[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(64)
こんにちは。4月を担当させていただく吉原奈美です。この場をお借りして東日本大震災で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。亡くなられた方のご冥福をお祈りしますと共に、被災者の方が一日でも早くより快適な生活をおくられますことを願います。私も微力ながら音楽療法士として少しでもお役に立てますよう、がんばっていきたいと思います。私は現在日本で活動しています。勤め先は様々ですが、Musicure(www.musicure-mt.com) という名のもと毎週金曜日に渋谷にオフィスを借りてGIM(ボニー式ガイデッド・イマジェリー・アンド・ミュージック)をしています。GIMは1970年代にボニー博士による意識の研究の中から生まれた音楽とイメージを用いる心理療法です。リラックスした状態で目的にあった音楽プログラムを聴き、自然に浮かぶイメージによって深層心理を探っていきます。自分自身への問いや明らかにしたい事の答え、存在意義や様々な物事の意味を自分の内面に求めていく手段で、心身の調和(Wholeness)に向うプロセスをお手伝いします。
私が初めてGIMに出会ったのはラドフォード大学に留学したての頃です。当時、Level Iトレーニングを受講していた大学院生が私にGIMをしてくれました。目的は忘れてしまいましたが留学している孤独感と向き合い、最後には背中を押してくれた祖父のイメージや多くの人に支えられているイメージが出てきた事が印象に残っています。その後、大学院に進み、必須教科であったGIMのトレーニングを受け始めました。GIMで人の闇と向き合うには、自分も闇と向き合うことが必要です。どん底を見つめなければ、人をどん底へ導きいれ、導きだす事はできないからです。ですから、現在に至るまでに私自身も数多くのセッションを経験しました。
GIMで出てきた人物のイメージの例では、王様、プリンセス、人魚など意味のある人物(アーキタイプ)のイメージ、自分の小さい頃のイメージ(Little Meと呼んでいました)などがありました。深く追求したイメージでは、長年にわたって積み重ねられてきた自分の怒り、人の怒りをまとった赤い大きな石や、いけにえにされて棒が刺さっていたことから空いたみぞおちの穴(これは解決するまでに時間がかかりました)などがありました。体験としても真っ黒い罪の意識の塊を産んでしまったり(これは私の体を芯から変えました)、反対に自分が産まれたり、過去に行ったり、宇宙(深い闇)をさまよったり、様々な色のエネルギーと重なったりと様々です。私自身はGIMを数多く受けたことで自分の心の変化が汲み取れるようになり、より心に正直に生きるようになりました。
体に溜まっていた罪悪感などが取り除かれて頭痛・生理痛が少なくなるなど、心身ともに大きな変化がありました。より調和が取れた楽な生き方ができています。GIMで人生が変わったと言っても良いくらいだと思います。渋谷のオフィスにいらっしゃる方は一般の方が中心です。最近の例では、正しい選択を妨げているものを探るという目的でGIMをした女性がいました。イメージを追及していくと、向き合わずに来た4回の流産の経験に根源があることが分かりました。その4人の痛みを受け取り感じることで、許しを得て、大切なもの、すなわち家族を優先する選択をしていこうという考えに結びついていきました。また、4回の流産の経験ともゆっくり時間をかけて向き合っていくという、急いで人生を歩んできた彼女にとっては新しい時間の作り方も浮かんできました。別の例では、空の巣症候群だろうと思われる女性の例がありました。特に自殺を考えているわけではないものの、彼女の仕事は終わったと感じていました。音楽を使ってみると、その根底には息子さんが子どもらしくいた最後の時期(小学校高学年くらい)に仕事で忙しく、あまり構ってやれなかったという罪悪感がありました。音楽と共に感情が湧き出て、母親として間違ったことを息子さんに詫び、クッションを抱きながら「大好きだよ」と何度も言う事ができました。彼女は息子さんとの対話をこれから辛抱強く進めていこうという考えに至りました。
人は生きていく上で色々なものを背負い込んでいきます。大切なことも、不必要なこともあります。道々で解決してきたこともあれば、目もくれずにきた事もあると思います。それが今の自分に何か影響を及ぼした時、他人から「ああしたらいい、こうしたらいい」とアドバイスを受けて解決するのではなく、どんな形であってもしっかりと向き合い自分自身の答えを自分が見つけていくことが必要なのだと思います。
東日本大震災では、これからどんどん心のケアが必要になってくると思います。私も被災者の方にはできるかぎり無償でGIMを提供していきたいと考えています。それぞれの方がそれぞれの道を探って行くきっかけを作れればと思います。加えて被災者の方のケアを提供している皆様のGIMも負担を減らして行っていければと思います。
また、余談ではありますが、ボランティアが集まり「頑張れ日本!ミュージック・セラピー・プロジェクト」という活動をしています。簡単にご報告させていただくと、AMTAと協力して寄付を集めたり、仲間サポートを提供したり、トラウマケアに関わる音楽療法士のお役に立てるようケースを翻訳したりするのが今のところの主な内容です。将来的には音楽に関わる企業にアプローチして楽器などの寄付を募っていきたいと考えています。HPなどができてくればまたご報告できると思います。皆様の応援をいただければ幸いです。 (平成23年4月8日 吉原奈美)
[編集後記]
このたびの東日本大震災によって、多くの人命が奪われましたことに哀悼の意を表するとともに、今なお避難所生活を余儀なくされております多くの被災者の皆様に心中よりお見舞い申し上げます。
日本でも音楽療法によって被災地を支援するプロジェクトが始動し始めたようで、今こそ、音楽療法が活躍する出番ではないでしょうか。音楽が復興への道しるべになることを期待しています。 (伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室)
伊賀音楽療法研究会(伊賀市社会福祉協議会内) http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm
ミュージキュア 音楽療法サービス
Musicure: Home http://www.musicure-mt.com/
白いエゾリス: アイヌの伝説にも登場した幻の白いエゾリスです。専門家の話では、人間の目にふれることは極めて稀である。 (jg8gwx)
タンチョウ 赤い吐息 美しき光景 Grus japonensis Red sigh Beautiful : 氷点下10度を下回った早朝、日の出と共にタンチョウが舞い降りた。その静まり返った草原はタンチョウの鳴き声と射光で赤く染まった吐息で神秘的な光景を生み出した。それは厳しい冬を向かえる前の儀式にも思えた。(jg8gwx)
作曲「風に舞う」:ぽぴん http://pop.world.coocan.jp/index.htm
「タンチョウ」撮影:kawamura http://www.hakuyukai.or.jp/kawamura/002index.htm
関連エントリー:
緑のマリモ(マリモのうた)
┗ http://masaokato.jp/2011/03/29/072651
音楽療法 カテゴリのアーカイブ
┗ http://masaokato.jp/blog/music/music-therapy
加藤 雅夫
@bihorokato 北海道美幌町
みなさま、イランカラプテ!日本と世界の人々と共に“平和心”を大切に育てる事が私の願いです。 Guitar Mandolin Music 美幌音楽人
┗ http://masaokato.jp/
「ありがとう音楽療法士吉原奈美さん! 頑張れ日本!」
加藤 雅夫(bihorokato) on Twitter
┗ http://twitter.com/bihorokato
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