JMTSPアメリカ音楽療法だより2月号(松本真実)

img_convalesce_01-240x180.jpg

伊賀音楽療法研究会(三重県の伊賀市社会福祉協議会)から、音楽療法メールマガジン2011年2月号が送られてきました。ありがとうございます。(美幌音楽人 加藤雅夫)

JMTSP(Japanese Music Therapy Students & Professionals)は、世界各国で音楽療法を勉強、または実践している日本人学生と音楽療法士、また世界の音楽療法に興味を持つ方々の情報交換場所として設立されました。
JMTSP 公式ホームページ http://www.geocities.jp/jmtsp2004/

伊賀音楽療法研究会メールマガジン2月号(No.115)

[世界音楽療法情報]
JMTSPアメリカ音楽療法だより(62)
初めまして。2月号を担当している松本真実です。先週、ユタ州ローガン市にある老人ホームで6ヶ月のインターンシップを終えました。インターンシップで行ったリサーチの報告をしたいと思います。対象者はデイケアの子どもと施設の老人の方たちです。そのグループはインタージェネレーショナルグループと呼ばれています。現代、お年寄りと子どもたちが接する機会は少なく、お互いにマイナスのイメージを抱きがちです。それを改善し、老人と子どもたちが歩み寄れるようにと、このプログラムは計画されています。老人と子どもたちは共通点があります。

それぞれの世代は、話をきいてもらいたいという望みと、生活面でのサポートが沢山必要ということと、同じ趣味をもっているということです。例えば、歌うこと、本を読むことや、ダンスをすることです。お互いが、それらの共通点に気づくことにより、老人と子どもたちの距離は近づくといいます。

私のリサーチの目的は二つあります。そのプログラムをどうしたらよりよいものにできるかということと、老人の方たちのいろいろなプラグラムへのそれぞれの反応の違いを研究するということです。週に一度、10人ほどの子どもたちがデイケアからその老人ホームを訪れて、一緒に一時間の音楽療法のプログラムに参加してくれます。そこの老人ホームではもう10年ほど行われているプログラムです。老人ホームからは、20人ほどのおじいちゃんおばあちゃんが参加してくれます。今までは、音楽療法士とインターンの方が、セッションプランを用意して行っていました。しかし、他の方々のリサーチを読むことにより、デイケアの先生たちと協力することにより、よりよいプログラムを提供できることがわかりました。デイケアの子どもたちのゴールや来週何を教わっているかを知るようにしました。彼らのゴールと老人ホームでのゴールを取り入れることにより、両参加者が、より利益を得られるようになりました。

子どもたちのゴールは、アルファベットを毎週一つ習うことです。老人の参加者には子どもたちとペアになってもらい家庭教師の役割をしてもらいます。老人の参加者は、子どもを教えるときに、自信を増すことができるそうです。子どもたちは、老人ホームでもデイケアの先生が教えることを学ぶので、自分たちが学んでいることは、他の人たちもまなんでいることなのだと、学ぶ意欲が増すそうです。

デイケアの先生に次回のセッションプランをメールで毎週おくるようにしました。そうすることにより、先生たちもどうやってそのグループに貢献し、助けられるかを知ることができるようになりました。また、その先生たちの意見や推薦を聞ける場にもなりました。協力するごとに、先生と音楽療法士の関係も深まり、協力しやすくなったように感じます。

子どもたちは、そのグループにより、音楽教育をうけられ、老人を尊敬し大切にし、奉仕をすることを学びます。子どもたちは、お年寄りの方々は楽しく一緒に遊んでくれる友達だという前向きなイメージを抱くことができます。お年寄りから、十分な注目を受けることができます。それから、老人を見、接することによって、 人間のエイジングの段階を学ぶことができます。ほとんどのデイケアの子どもたちは、静かで一人っ子が多く、シングルペアレントのもとで育っているので、自分の親以外と接する機会があまりありません。ですから、その子どもたちは、このグループに参加することにより、他の人とどうやって接するかを学ぶことができます。グループでは、一人一人の子どもたちにスカーフのムーブメントをリードしてもらったりと、リーダーシップも学べるようにしています。

お年寄りは、子どもと接することにより、よく笑顔になりよいムードをセッションの後でも保つことができます。認知症の症状が遅れるという調査もでています。楽器を一緒に演奏することにより、筋肉を維持することができます。子どもを教えることにより、自分に価値をみいだすことができます。お年寄りにとっても、ほかの人と接する良い機会となっています。子どもと接することにより、自分の子どもとの思い出を思い出せる良い機会になっています。

子どもたちは、今日おじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くのかとほぼ毎日先生に聞くほど、そのプログラムを楽しみにしているようです。

施設のお年寄りが子どもたちを大好きで、よく接してくれるのをわかっているというのが一つの理由といえます。先生は、お年寄りが子どもたちは特別な存在であると感じさせてくれると信じています。

いくつかのチャレンジは、子どもたちがお年寄りになれるのに時間がかかることです。グランドフレンドまたは、おじいちゃん、おばあちゃんと呼ぶことにより、家庭的な環境を提供し、はやくお年寄りになれるようにくふうしています。また、一対一でペアになり、音楽療法の活動をするごとに、お互いの名前を聞き、好きな色、食べ物、動物などを質問してもらい、お互いが個人的に知り合えるようにしています。個人的に知り合うことにより、より親しみを感じやすいとのことです。

施設では、インタージェネレーショナルグループ以外に、オークション、バスツアー、音楽鑑賞, 水彩画等のグループがあります。週に一度、インタージェネレーショナルグループと、違うグループに行き、参加者の参加率を評価しました。結果として、インタージェネレーショナルプログラムの方が、参加者がよりグループに貢献する機会があることがわかりました。他のプログラムで参加者は居眠りをしたり、自分に集中していることが多いことがわかりました。

インタージェネレーショナルグループは、お年寄りも子どもたちもお互いが楽しみにでき、お互いに利益を得られるグループです。終わりまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。 
松本真実 testimony1106◎hotmail.com

 
[編集後記]
日本音楽療法学会の理事長でいらっしゃる日野原重明先生は、明治44年10月のお生まれと言うことは、御年99歳で、今年100歳を迎えられる白寿でいらっしゃいます。今年9月に富山県で開催される第11回日本音楽療法学術大会では、日野原理事長による100歳記念基調講演が予定されています。また、来年9月に宮崎県で開催が予定されている第12回学術大会の大会長は日野原先生自らがつとめるとのこと。
音楽療法が長寿の要因であることを、これから先もずっと証明し続けていってほしいものです。

伊賀音楽療法研究会 http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm

日野原重明 – Wikipedia
日野原 重明(ひのはら しげあき、1911年(明治44年)10月4日 – )は日本の医師。医学博士(京都帝国大学)。聖路加国際病院理事長。同名誉院長。 趣味の一つにピアノがある。結核を患い、闘病生活を送っていた当時、「ノクターン」を作曲した。この曲は、2008年2月17日放送の「N響アワー」(NHK教育テレビ)で日野原がゲスト出演した際、池辺晋一郎によってごく一部ではあるが披露された。

日本音楽療法学会:公式サイト http://www.jmta.jp/

音楽療法 カテゴリのアーカイブ http://masaokato.jp/blog/music/music-therapy

bihorokato_icon4.jpg

@bihorokato 美幌音楽人 加藤雅夫(北海道美幌町)
昭和44年、アスペルギルス症で両肺半分を切除する(主治医は札幌医大の和田教授)。 Juliette Alvin(ジュリエット・アルヴァン)の英文著書「Music Therapy」(音楽療法)を読む。その後何度か、日本バイオミュージック学会(日本音楽療法学会)の日野原重明さんと電話でお話をして、北海道の栗林文雄さんのことを教えていただく。平成10年、当別町にあるギター工房で栗林文雄さんとお会いした。
「春を待つ 雪間の土に 福寿草」(美幌梅山)
加藤 雅夫(bihorokato) on Twitter http://twitter.com/bihorokato

このページの先頭へ戻る

2 件のコメント

  1. 前にも書かしていただきましたが、脳卒中後遺症の「視床痛」に四六時中悩まされています。なかなか厳しいものがあります。私なりに癒しの音楽を聴いて、身をリラックスしています。仲良く付き合っていかないといけません・・。

    なりひら より 2011 年 2 月 25 日 01:54

  2. なりひらさんの心底コメントには痛み入ります。
    視床痛というものは なかなか厳しいですか…。

    なりひらさんの「視床痛」と、私のパソコン椅子の「床ずれ痛」を
    一週間くらい交換しましょうか?
    曇り後 雨、後に晴れ 視床痛 (交換痛心)

    加藤 雅夫 より 2011 年 2 月 25 日 06:19

コメントをどうぞ

  • お名前とメールアドレスは必ず入力してください。
    (メールアドレスは管理者にのみ通知され、コメント一覧には表示されません)
  • いただいたコメントは管理者の承認が必要となる場合がありますのでご了承ください。

このページの先頭へ戻る