アメリカと日本の音楽療法情報(2011)

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伊賀音楽療法研究会(三重県の伊賀市社会福祉協議会)から、2011年最初の音楽療法メールマガジン1月号が送られてきました。ありがとうございます。(美幌音楽人 加藤雅夫)

写真:韓国ドラマ「冬のソナタ」(겨울연가)

伊賀音楽療法研究会メールマガジン1月号(No.114)

[世界音楽療法情報]

JMTSPアメリカ音楽療法だより(61)
皆様、新年明けましておめでとうございます。2011年01月号を書かしていただきます鎌原大作です。JMTSPのメンバー内ではサコと呼ばれております。数年前にも一度記事を書かせていただいたのですが、その時に私が書いた記事のトピックは。。。満月!う~ん、あまり直接、音楽療法と関係があまり無いな~と後から思いまして、ちょっと後悔。ですので、今回はもう少し音楽療法に関連した事ついて書かねばと考えました。でも、ちょっと天邪鬼な私。ただ、音楽療法セッションについては書きたくない。ですので、実は明日から自分の仕事場に新しい音楽療法インターン生がやってきますので、今回はアメリカでの音楽療法・スーパーヴィジョン(Supervision, 以下SV)での、スーパヴァイザー(以下 ヴァイザー)とスーパーヴァイジー(以下ヴァイジー)の関係のあり方について、私なりの考えをご紹介したいと思います。

アメリカで音楽療法士(MT-BC)の受験資格を得る為には、全米音楽療法協会(以下AMTA)公認の音楽療法学科をもつ大学で、必要とされる科目を学んだ後に、約1040時間のインターンシップを経験する事が求められています。この1040時間は一日8時間、週五日で計算して、大体六ヶ月となっております。自分はAMTA公認の音楽療法インターンシップ・サイトでヴァイザーを、かれこれ数年間やっておりまして、現在まで送り出したバイジーの数は12人位でしょうか。

日本では、「師弟関係」と表現もありますように、知識や技術を後の人たちに伝授していくという文化がありますよね。このSVも同じ様なものだと思われている人もいるかもしれませんが、実は違う点が幾つかあります。簡潔に一言で言わせていただければ、アメリカでヴァイザーとヴァイジーの関係で根底に流れているものは「対等」であると言うことです。言い換えると、バイザーがヴァイジーに一方的に教えて、ヴァイジーはその情報を丸呑みして覚えるものだけでは無いと言う事なのです。しかし、その過程に至るまでには3段階のヴァイザー・ヴァイジ-関係があるのではないかと思っています。

まずは第一段階目は上にも書きました師弟関係(Teacher-Student)です。ヴァイジーがインターンシップを始めた最初の二ヶ月位は、この関係が続きます。この段階においては、ヴァイザーは先生になります。この職場でのルール、服装、アセスメント、チャートの書き方などなど色々、この職場で決められている事を教えます。私の職場は自殺念慮・他殺念慮を持たれている方の設置入院専門の精神病院ですので、武器になりえる楽器などの取り扱い方なども、この項目に入ります。音楽療法のテクニックにおいてても、妄想・幻覚・幻聴などを経験している患者さんには、Guided Imagery and Music(音楽によるイメージ誘導法)などは、絶対に使ってはいけないとも教えています。

第二段階目の関係はセラピスト・クライエント関係です。ここの段階は大体三ヶ月から五ヶ月位まで続き、ヴァイザーとヴァイジーが一緒になって課題をクリアーしていく事が強く求められます。ヴァイザーの主な役割としては、ヴァイジーの力量を見定めて、現在の課題を明確化して、改善の方向を探るお手伝いをします。例えば、一つ一つのセッションが終わった後にするヴァイザー・コメントとして、まず最初に私がする事は、私自身の感想をいう事は、滅多に無くて質問から入ります。良く聞く質問は「ヴァイジー自身で今のセッションをどう思ったのか?」「患者さんの課題は何だったと判断したのか?」「何故このアプローチを用いたのか?」「どの様なインターベンションが効果的だったか?」「もし改善点があるとすれば?」などと、ヴァイジー自身で考える技術=洞察力を伸ば事を目的としています。ですので、自分の感想・コメントは最後に少しだけ付け足す程度にしています。

そして、最後の六ヶ月目でアドヴァイザー・クライエントの関係になる様に努力をしています。ここの段階までに到達したら、ヴァイジーを一人前のセラピストとして、基本的に扱います。ヴァイジーのセッションに対して口出しも一切しません。もしヴァイジーが何かの課題にぶつかって、困っていてヴァイザーの意見を求められたら致します。ヴァイザーはその課題に対して、プランA、プランB、プランCがあるよ、と解決案を幾つか提示はしますが、それを受け容れるのも、受け容れないのも、それはヴァイジーが決める事。もし受け容れられなくても、全くもって気にはしません。何故なら、ヴァイジーは既にひとり立ちをしているのです。ヴァイジーにとって必要な情報、必要では無い情報を選ぶ権利があるからです。言い換えると、ヴァイジーの自己責任に全てかかってくるというわけです。

以前、日本である方とお話をしていて気になった事がありました。
それは「私のセッションはかの高名なXX先生からお墨付きを貰ったので大丈夫です」というものでした。私はこれにはとてつもない危険性を含んでいると思っています。セラピストとして一人立ちをする為には、まず誰でもない、自分自身のアプローチを確立する事。そして、自分のアプローチに対して、自分自身で口頭で説明できる事が必須になっているのでは無いでしょうか?高名な方の判断も確かに一つの基準には成りえますが、自分自身の音楽療法としての哲学、受けてきた教育、経験、そしてリサーチなどを元に、私はこの様な判断を下して、この様なアプローチを行った、と言えるようになるのが最終ゴールな気がするのですが、皆さんはどう思われるでしょうか?

最後になりましたが、伊賀音楽療法研究会は10周年を向えられたとか。。。おめでとうございます。実はJMTSPも2011年11月で10周年を向えます。大きな歴史の流れから見たら10年など大した事など無いのかもしれませんが、やはり自分にとって10年間続けてこれた事には大きな意味がありますね。今年のメルマガの執筆者は12月まで既に決まっております。今までは、できるだけ新しいメンバーに記事を書いてもらっていました。しかし今年は自分も含めて、以前に記事を書いた事のあるメンバーにも何人か書いてもらう予定です。以前記事を書いてくれた学生だったメンバーたちも、インターンシップを経験したり、アメリカで仕事を始めたり、また日本に帰国して、日本の音楽療法の発展に頑張っている人など、バラエティに富んできました。これも10年という時間のなせる業でしょう。ですから、今年は以前にも増して多彩なJMTSPメンバーが送る記事を楽しんでいただけたらと願っております。

それでは皆様、Happy New Year!
サコ事、鎌原大作

 
[日本音楽療法情報]

第10回日本音楽療法学会東海支部大会
【日 時】2011年1月23日(日)9:00~17:20
【場 所】名古屋芸術大学音楽学部 東キャンパス
(〒481-8503 北名古屋市熊之庄古井281)
名鉄犬山線 徳重・名古屋芸大駅下車 東へ徒歩10分
駐車場有
【内 容】9:00~ 9:30 受付
9:30~11:00 研修1 テーマ:「研究法入門」
講師:金子一史氏(名古屋大学発達心理精神科学研究センター准教授)
11:20~12:50 研修2(コース1~3)
(コース1)テーマ:「ことばと動きの表現を楽しもう」~オルフ音楽教育の理念を基にした、アンサンブルの体験~
※動きやすい服装でお越しください。
講師:飯塚暁子氏(愛育学園アートティーチャー、ミュージック・プレイ・セラピィ研究会 代表)
(コース2)テーマ:「コミュニケーションとしての即興演奏の可能性を探る」~人間主義理論に基づくノードフ・ロビンズ創造的音楽療法をベースとして~
講師:八重田美衣氏(青山学院大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、日本大学芸術学部兼任講師)
(コース3)テーマ:「『音楽を通して人を理解すること』とは」~サイコダイナミック音楽療法の考え方をとり入れた事例紹介と体験を通して~
講師:高橋真喜子氏(英国公認音楽療法士)
12:50~13:30 昼食休憩
13:30~13:50 開会式、総会
14:00~15:30 基調講演
「臨床におけるスピリチュアルケアと音楽療法」
講師:大下大圓氏(高野山阿闍梨)
15:45~17:05 研究発表(3会場)
17:15~17:20 閉会式
【参加費】正会員及び一般5,000円/学生会員・非会員学生4,000円
※事前申し込みは締め切りました。大会参加費に午前の研修会参加費も含みます。
※非会員の方は、午前中の研修会および総会には参加できません。
非会員の学生の方は、当日受付にて学生証を提示してください。
【問い合わせ先】日本音楽療法学会東海支部事務局
TEL 0575-24-2238 FAX 0575-24-9432
※会場近くにコンビ二、お弁当屋はございますが、当日は混雑が予想されるため、あらかじめ昼食を用意されることをお勧めいたします。

 
[日本音楽療法情報]

音楽療法ネットワーク三重主催 講演会
「特別支援学校の教科書「おんがく☆~☆☆☆」と実践」
講師:根津知佳子氏(三重大学教育学部教授)
「音楽的情動のニューロサイエンス」
講師:佐藤 正之氏(三重大学医学部准教授)
【日 時】2011年2月6日(日)13:30~16:30
【会 場】三重大学 教育学部1号館1階 多目的ホール
津市栗真町屋町1577(近鉄江戸橋駅徒歩15分・駐車場有)
【参加費】音楽療法ネットワーク三重会員 2,000円・一般 3,000円
【申し込み方法】郵便局備付の郵便振込用紙にて下記口座へ事前にお振込ください。
【問い合わせ先】音楽療法ネットワーク三重 事務局
(三重大学教育学部 音楽棟内 根津研究室)
Fax 059-231-9268 (事務員は常駐していません)
※日本音楽療法学会認定講習ポイント申請予定

 
[編集後記]
音楽療法メルマガご購読の皆様、新年あけましておめでとうござい
ます。本年もよろしくお願い申し上げます。
アメリカ音楽療法だよりも掲載6年目に突入しました。JMTSPも今年結成10周年になるとのこと、これまで、この音楽療法メルマガのメイン記事を毎月送っていただいていることを厚く感謝申し上げます。すでに12月までの執筆者が決定しているとのこと、しかも、これまですでに執筆いただいた方からもさらなる実践的なレポートが寄せられるようで、非常に楽しみです。日本とアメリカの音楽療法事情は、未だに溝が深まるばかりのようにも思えますが、海外から帰国して日本で音楽療法を実践される方も増えているようですので、日本の音楽療法も大いに感化されて発展していくことを望みます。

[伊賀音楽療法研究会メールマガジン]
このメルマガは、毎月1回以上発行する予定です。
セミナー・講習会情報など、音楽療法に関する情報をお寄せください。

伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室
伊賀市社会福祉協議会 http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm


음악 요법(호텔리어, 겨울연가)
君に逢える日 / My Memoryusecoin

音楽療法 カテゴリのアーカイブ http://masaokato.jp/blog/music/music-therapy

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加藤 雅夫
@bihorokato 美幌音楽人加藤雅夫(北海道美幌町)のツイート
「音楽に意味を求めたってはじまらない、音楽は感じるものだ」
音楽療法士の皆様、今年もよろしくお願いします!
加藤 雅夫 (bihorokato) on Twitter http://twitter.com/bihorokato

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7 件のコメント

  1. 音楽療法Google

    音楽療法情報Google

    日本の音楽療法Google

    アメリカの音楽療法Google

    音楽療法のニュースGoogle

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 19 日 15:59

  2. 最初から今まで–Harmonica

    冬のソナタの「最初から今まで」をクロマチックハーモニカで演奏しました♪
    聴いて下さい! (southrachel

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 22 日 12:31

  3. 最初から今まで – 女子十二樂坊

    spirit07

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 22 日 12:32

  4. 안녕히 주무세요 …

    おやすみなさい…

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 22 日 22:56

  5. 美幌音楽人さん、こんばんわ。
     音楽療法についての詳細なレポートありがとうございます。以前にも申したかと思いますが、脳卒中の後遺症である(疼痛、強い痺れ、強い筋緊張)には、多くの方々が悩んでおり、私もその一人です。

     一説に、脳卒中の後遺症を抱える方々の4割が「うつ病」になっているという話があります。1年365日、寝ている時以外は、ここ後遺症が襲ってくるのですから、精神的には大変辛い訳で、あながち大げさな情報とは思われません。

     こうした後遺症に、現在の西洋医学はほぼ無力であり、仕方なく民間療法に頼っている方もおられるようですが、芳しい改善の話は耳にしません。

     一つの改善法として「オルゴール療法」というものがあり、調べてみると、1台30~40万円もするようなオルゴールを売りつける類の話であり、ある種の「いかさま療法」と身切りました。

     ただ、音楽が緊張状態をほぐし、安楽な気分にさせる効果は、昔から(その道の権威者ではなく)患者さんに認められており、私も、自分に最もフィットする音楽を探して、そのCDや、インターネット・ラジオの音楽を、家はよく聞いています。確かに楽な気分になることで、筋緊張が緩和される効果はあるようです。

     音楽の種類は、私の場合は、レクイエム(フォーレ、デュリフレ等)、チェロの独奏曲、ドビッシーやサティのピアノ小品等です。ここにも書いておられるように、その道の権威者の推奨うんぬんは、全く信用出来ませんので、自分なりに音楽と向き合っていきたいと考えております。

     昨日、自分のブログで取り上げた「secret garden」の曲も、自分には相性の良い曲です。結局、この種の話は、万人に共通的な効果が得られるものは、ほぼあり得ない訳で、十人十色であっても仕方ないと想っています。

    なりひら より 2011 年 1 月 23 日 21:39


  6. Exbury Gardens – Hampshire Guitar Orchestra (HAGO)

    なりひらさん、コメントありがとうございます。
    アイルランドのフィドル(ヴァイオリン)ですね。なりひらの部屋で「不思議なヒーリング・ミュージック」を聞いてきました。

    私も40年間、呼吸困難で苦しんできました。軽い発作のときは「8/6拍子」の曲をギター演奏します。呼吸が落ち着いて手足が暖かくなります。気管支拡張剤よりも効きます。主治医も認めています。音楽療法には「呼吸法」がとても大切です。
    「千万人行けども我行かぬ」


    Eternal Flame – Hampshire Guitar Orchestra (hago) arr Derek Hasted

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 24 日 00:20

  7. フィールドオブゴールド – フルート&ギター – ハンプシャー ギターオーケストラ


    Fields of Gold – Flute & Guitars – Hampshire Guitar Orchestra

    加藤 雅夫 より 2011 年 1 月 24 日 00:36

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