連載 高齢ドライバーの現状 (北海道オホーツク管内)
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高齢ドライバー(こうれいドライバー)は、いつ逮捕されても不思議ではない犯罪予備軍である。 高齢者ドライバー、老人ドライバーなどと呼ばれることもある。 概要 / 高速道路をはじめとする一方通行道の逆走や、ブレーキの代わりにアクセルを踏み込むことによる暴走行為など、道路交通法規に違反する無秩序な運転を行い交通の危険を生じさせる運転者群である。若年ドライバーによる暴走族と類似性があるが、暴走族が故意に危険な運転をするのに対して、高齢ドライバーの場合には危険な運転をしているという自覚がないのが特徴である。 高齢ドライバーの一部には、飲酒運転や、免許の更新をしていないのに運転する無免許運転のように、明確な犯罪といえる行為に及ぶ者も一部には存在する。しかし、そのようにあからさまな犯罪行為など、高齢ドライバーの問題においてはほんの氷山の一角に過ぎない。 高齢ドライバーによる典型的な犯罪は、自動車運転過失致死傷罪と道路交通法違反である。前者は7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金という刑が定められており、これは、若年の犯罪予備軍にみられがちな暴行罪(2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は勾留若しくは科料)や公務執行妨害罪(3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金)よりも重い罪となっている。高齢ドライバーは、いつ逮捕され刑務所に送られることになっても不思議はないのである。 人間は年を経るに従って身体的機能が衰えるものであり、このことは運転についても同様である。ところが、多くの高齢ドライバーには運転能力が衰えているという自覚がなく、それどころか、運転だけは誰にも負けないという奇妙な自信を持っている。長年の経験を積んでいることがその自信の根拠のようである。どんなに経験が長くても、年を取ったスポーツ選手は能力が衰えて引退せざるをえなくなることを考えてみれば、とっさのときに自分が適切な行動を取れるかどうかわかりそうなものであるが。 人生を犯罪者として終える前に、免許を返納すべきである。 (高齢ドライバー – アンサイクロペディア)
連載 高齢ドライバーの現状 (1) 2019/08/03掲載(網走管内/社会・本誌連載) 管内の運転免許証自主返納が急増 / 高齢ドライバーによる痛ましい交通事故が全国各地で相次ぎ、各メディアが大きく報じるなど社会問題化している。都市部に比べ公共交通網の手薄なオホーツク地方では、高齢になってもマイカーを手放せない人も多く、難しい課題となっている。運転免許証自主返納の状況や高齢ドライバーの特徴などを連載で紹介する。 前年比で5月は1.5倍、6月2倍 4月の東京・池袋の暴走事故影響か / オホーツク管内で自動車の運転免許証を自主返納する人が、5月から急増している。道警北見方面本部交通課によると、5月は前年同月比30人増の97人、6月は同54人増の104人だった。同課は、高齢ドライバーによる交通事故が相次いで報道されていることが一因とみている。 東京・池袋で高齢ドライバーの暴走により2人が死亡した4月の交通事故発生以降、全国各地の高齢ドライバーによる交通事故が相次いで報道されるようになった。 管内における運転免許証の自主返納者数は月によってばらつきがあるものの、2017年が計724人、18年が計706人で月平均約60件だった。今年は1月55人、2月49人、3月83人、4月65人で推移。5、6月と急増した。 運転に関する適正相談を受けている北見運転免許試験場(北見市大正、0157・36・7700)には、加齢や病気で運転に不安がある人などからの相談が寄せられている。 内容はさまざまだが、医師から認知能力の低下を指摘されても自覚がないため運転を続け、心配する家族が相談に訪れるケースもあるという。 一方で「通院や買い物に困るので、運転に不安があっても免許証を返納できない」という声も多い。 糖尿病を患う70代の男性は「運転には自信があるが、ウインカーを出そうと思ってワイパーを動かしてしまったことがあり、一瞬、パニックになった。返納も考えたが、通院や生活のことを考えると、まだ免許証は必要」と語る。 同試験場は「運転に不安を感じたら、遠慮なく早めに相談を。家族だけでなく、町内会など身近に運転の心配な人がいたら、警察や試験場に連絡してください」と呼び掛けている。(匡) (オホーツクのフリーペーパー経済の伝書鳩)
連載 高齢ドライバーの現状 (2) 2019/08/06掲載(北見市/社会・本誌連載) 加齢とともに視力や判断力低下 / 民間シンクタンクの調査によると、65歳以上のドライバーは自分の運転に自信を持つ人の割合が高く、80歳以上になると約7割が「自信がある」と回答。しかし身体能力や認知能力、判断能力などは、程度の差こそあれ加齢による低下は避けられない。免許更新時の高齢者講習や北見市主催の高齢運転者講習を受託する野付牛自動車学校の中尾利美校長に高齢ドライバーの特徴や注意すべき点などを聞いた。 北見の野付牛自動車学校 中尾 利美校長に聞く 踏み間違いは全世代で発生も、高齢者は重大事故が増加 運転経験から得た自信が操作ミスを誘発 / 【視力の低下】動体視力が低下し、視野が狭くなると相手の車を見落としたり、速度や距離感覚の誤認により出合い頭の衝突事故などが起きる恐れがあります。また信号や標識、歩行者や自転車などの見落としや見誤りも懸念されます。 【判断能力の低下】とっさの判断の遅れや誤操作が起きやすくなります。また一度に複数の操作をする際に判断や決定までの情報処理に時間がかかるようになります。【操作能力の低下】判断能力と身体能力の低下により瞬間的な対応が難しくなります。また、今までの運転経験で得た自信と、現在の身体能力の差により操作ミスを起こしやすくなります。 【踏み間違えはなぜ起きる?】ペダルの踏み間違いは高齢者に特別多いというわけではなく、他の年代にもありがちな操作ミスです。しかし高齢になると踏み間違いによる重大事故が一気に増加します。これはアクセルとブレーキの踏み間違いに気付くのが遅れることが原因と考えられます。 通常、ドライバーはブレーキとアクセルを踏み間違えた場合、瞬時に気付いて修正します。しかし誤操作に気付くのが遅れるとパニック状態となり、重大事故につながることがあります。!踏み間違いが起きる事例として「後退時に窓やドアを開けて上体をひねる」「有料駐車場の出入り口で腕を伸ばす」が挙げられます。 こうした動作により下半身とのずれが生じ、右足がブレーキペダルからアクセルペダルにずれてしまう事故例があります。 もちろん個人差はありますが、加齢に伴い股関節が硬くなり、頭の中ではブレーキペダルを踏んでいるつもりが、実際はアクセルペダルを踏んでしまうということが起きるようです。 すべての事故原因がこれらに当てはまるわけではありませんが、このような状態(体勢)になると誤操作が起きてしまうという意識を持つことが大切です。 【高齢ドライバーが注意すべき点】高齢運転者の中には安全運転意識の高い方、自分の身体能力、認知能力を自覚して運転している方も多数います。しかし高齢になれば様々な機能に変化が生じます。重大事故を防止するためにも運転前の体調を確認し、無理をせず状況に見合った運転をすることが大切です。また、日頃から足腰を鍛え、柔軟性を保つ運動を実践しましょう。(柏) (オホーツクのフリーペーパー経済の伝書鳩)
連載 高齢ドライバーの現状 (3) 2019/08/09掲載(北見市/社会・本誌連載) 自動車の自動ブレーキシステム あくまで補助、過信は禁物 / 北見地方自動車整備振興会 男性に聞く 機能や役割を理解して活用を 自動車の日ごろのメンテナンスも重要 / 相次ぐ高齢運転者の事故により、衝突を回避したり衝撃を緩和する自動ブレーキシステム(衝突被害軽減ブレーキ)への関心が高まっている。しかし、システムの機能や役割については、誤解も少なくないという。北見地方自動車整備振興会の中田吉則さんに自動ブレーキシステムの基礎知識を聞いた。?【自動ブレーキシステムとは】自動ブレーキシステムは、メーカーによって方式や仕組みに違いはありますが、基本的には自動車が前方の障害物と衝突するのを避ける、または衝突速度を下げるために自動的に作動する安全装備です。車載のカメラやレーダーが捉えた情報をコンピューターが解析し、車や自転車、歩行者などと認識すると警告音を発します。それでも衝突の危険があると判断した場合、自動ブレーキが作動して被害軽減を図ります。!【状況により誤作動も】大変心強いシステムですが、あくまでも運転をサポートするための技術です。また、周囲の環境や速度によっては誤作動を起こしたり、作動しない場合もあることを理解しましょう。たとえば、前方にある金網や壁を障害物と認識しないケースがある一方、道路工事中に路上に敷かれている鉄板や道路脇に生い茂った樹木を障害物と認識してしまうケースなどがあります。また、逆光時やトンネル進入直後なども誤作動が起きる可能性があります。 【日ごろのメンテナンスが重要】自動ブレーキシステムが性能を十分発揮するには日ごろのメンテナンスも重要です。主なチェック項目はタイヤの空気圧や溝の磨耗状況、ブレーキなど。車載カメラはフロントガラスの汚れや油膜の影響を受けますので、各メーカーの規定などに準じて適切に管理しなければなりません。また、自動ブレーキの作動中にドライバーがアクセルを踏み込んだり急ハンドルなどの回避行動を取ると解除されることがありますので、注意が必要です。 【あくまでも運転の補助】自動ブレーキシステムは現在、新車の約8割に標準装備されており、近い将来は100%となる見通しです。今後はさらに技術が進歩し、検知機能の向上や誤作動の減少が期待されるところです。ドライバーは、自動ブレーキシステムにできること、できないことを十分に理解し、あくまでも運転の補助であることを意識して運転することが大切です。(柏) (オホーツクのフリーペーパー経済の伝書鳩)
連載 高齢ドライバーの現状 (4) 2019/08/12掲載(北見市/社会・本誌連載) 北見市の高齢者運転講習 自分の運転に“気付く”機会に / 北見市は70歳以上の運転免許所持者を対象とする「高齢者運転講習」を春と秋の年2回、開催している。高齢ドライバーの事故に関する報道が相次いでいたころの今年5月の講習会には、定員を大きく上回る申し込みがあった。参加者には改めて自分自身の運転を見直す良い機会となっているようで、市は回数増などの拡充を検討している。 年2回開催、前回は定員の2倍近い申し込み ミント宅配便のメニューにも交通安全教室が / この講習は、高齢運転者の安全意識を高める狙いで昨年度にスタート。野付牛自動車学校に委託し、春と秋の交通安全運動に合わせて年2回開催している。5月に開かれた今年度1回目の講習会は7歳から89歳まで定員いっぱいの20人が受講。申し込みは定員の2倍近くに上ったという。 講習では最初に実車教習が行われ、参加者は方向転換や縦列駐車、カーブ走行、段差の乗り上げなどに取り組んだ。車両感覚やアクセル・ブレーキの操作などに感覚のずれや遅れがないかをチェックし、同乗した教官から指摘やアドバイスを受けた。 座学では免許更新時の注意点や社会問題化する高齢ドライバーの事故について学び、ドライビングシミュレーターも体験した。 講習後に回収したアンケートでは「今後のことを考えるきっかけになった」「無理して運転するのはいけないと思った」などの声が寄せられている。9月26日には今年度2回目の講習が行われる予定だ。 市民の関心の高さを受け、市は講習の拡充や別の形態による啓発事業などを検討している。 このほか市は出前講座「ミント宅配便」のメニュー(行政編)に交通安全教室を設けている。町内会や老人クラブなどの利用があり、参加者は身体能力や認知能力などを試す簡単なテストに取り組みながらセーフティドライブを学んでいる。 市民生活課交通安全担当係長の北村浩一さんは「運転講習や交通安全教室の大きな目的が、自分自身の現在の状態を知る“気付きの場”になること。受講後に、それぞれ感じたことを実践してくれればいいですね」と語る。 また「身体・認知機能は個人差が大きく、年齢を重ねたからといって必ずしも衰える一方ではありません。長く安全に運転するためには日ごろの運動も大切です」と呼びかけている。(柏) (オホーツクのフリーペーパー経済の伝書鳩)
連載 高齢ドライバーの現状 (完) 2019/08/16掲載(その他/本誌連載) 高齢ドライバーの事故は増加? 内閣府の交通安全白書より / 件数は横ばいも比率が増加 死亡事故の割合高く / 高齢ドライバーによる痛ましい交通事故の報道が相次いでいるが、果たして高齢ドライバーの事故は増えているのだろうか。内閣府の「平成29年交通安全白書」から高齢ドライバーの事故状況や運転特性などをひも解いた。 白書によると交通死亡事故の総数はこの10年、減少傾向が続く。そうした中、75歳以上の運転者による死亡事故は、ほぼ横ばいで推移。そのため高齢者の事故の割合が相対的に増加している(グラフ (1)参照)。 一方、75歳以上の運転者の死亡事故件数(免許証所有者10万人あたり)は75歳未満の運転者に比べ2倍余りに上る(グラフ (2)参照)。このように高齢ドライバーの事故は件数自体が増えているわけではないが全体に占める割合が増加し、死亡事故の比率が高いというのが実情のようだ。高齢化の進行とともに75歳以上の免許所有者は今後も増加する見通しで、事故の増加が懸念されている。 白書では高齢ドライバーの特性として動体視力の低下や、同時に複数の情報を処理したり瞬時の判断が苦手になることなどを指摘。死亡事故の原因ではハンドルなどの操作不適(運転ミス)が他の年代に比べて多いのが特徴で、このうちアクセルとブレーキの踏み間違いは他の年代の8倍に上る。 今年上半期に起きた痛ましい交通事故を受けて国は6月、「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」を策定。高齢者に関する対策として衝突被害軽減ブレーキの国内基準策定や高齢者に特化した免許制度創設の検討、自主返納制度の支援、公共交通機関の活用などを掲げている。(柏) (オホーツクのフリーペーパー経済の伝書鳩)
関連サイト
高齢者を取りまく現状 | 平成29年交通安全白書(概要) – 内閣府ホームページ
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