JMTSPアメリカ音楽療法だより(花崎 拳)

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伊賀音楽療法研究会(三重県伊賀市)から「日本と世界の音楽療法情報」が送られてきました。 

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伊賀音楽療法研究会メールマガジン9月号(No.134) 

[世界音楽療法情報] 

JMTSPアメリカ音楽療法だより(79)
 皆様こんにちは。この度9月号のメールマガジンを担当させていただきます花崎拳と申します。今回の記事では、僕が現在通っている大学の中のカリキュラムの中の一つでもあるプラクティカム(実習)を通して経験したことや学んだことを書かせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 僕は現在アメリカのニュージャージー州にある Montclair State University (モントクレア州立大学、MSU)にて音楽療法の勉強をしています。大学生活は通算して4年目に入りますが、2年目の始めに別の大学から転校してきてそのときに専攻を音楽教育から音楽療法へと変えました。なので音楽療法の勉強は現在3年目に入ろうとしているところです。
 MSU では2年生からキャンパス外の施設へ週一回行き、それぞれの施設で働いている音楽療法士のサポートをしたり、セッションの観察、またセッションのリードを行ったりするプラクティカムの授業があります。この実習は3年間を通して行われるのですが毎年行く施設とクライアントの年齢層が変わります。僕の学校では老人、子ども、精神病患者の順番で実習を行います。僕は2011年10月から2012年4月まで老人ホームにてこの実習を行いました。この約7ヶ月間の実習で学んだことや経験したことを今から皆さんに少しシェアしたいと思います。
 2011年の9月に、僕が今年の実習で老人ホームに行くことが決まりました。今まで音楽療法については授業で使用する教科書、教材ビデオや論文からの知識しかありませんでした。実際に音楽療法の現場に行くのは初めての経験でした。
 僕が老人ホームに行って行う活動は主に二つありました。それは秋のセメスター(前期)と春のセメスター(後期)で異なります。秋のセメスターは老人ホームで働いている音楽療法士が行っているセッションの観察が中心でした。春のセメスターは自分がセッションをリードするのが中心でした。
 僕が通った老人ホームでは女性の音楽療法士が一人いて、その方のもとで約7ヶ月間勉強させていただきました。この施設では午前と午後に一回ずつグループセッションが行われその他の時間は個人セッションなどを行っていました。僕は週一回、午後のセッションの観察とリードを行いました。
 この老人ホームにいるクライアントの方々は皆この施設に住んでいるとのことでした。日常生活を一人で行うことができない人、体に障がいを持っている人、精神的な障がいを持っている人、リハビリ中の人など様々な理由でこの老人ホームに住んでいました。中でも一番多かったのは、アルツハイマー病と認知症の方々でした。このような障がいを持っている方たちと接するのも初めてだったので、最初はどうやってコミュニケーションをとればよいのか戸惑いました。
 秋のセメスターではセッションの観察を中心に行い、その他に音楽療法士のセッション内でのサポートなどを行いました。セッションでは音楽療法士がピアノやギターを弾きながら一緒に歌を歌ったり、打楽器をそれぞれたたいたりするのがメインでした。僕も歌を歌うときはクライアントの隣に座って一緒に歌ったり、打楽器を叩くのをサポートしたりしました。セッションを観察したりサポートしている中で感じたことは、クライアントの方々一人一人音楽に対する反応が違うということでした。大きな声で歌う人、小さな声で歌う人、歌ってはいないですけど音楽を聴いている人、寝ている人などと様々でした。あるセッションの後に音楽療法士の方とお話をしている中でおっしゃっていたことが、「ここにいる人たちはみんなほとんど一日中施設のなかで生活していて外に行くことはあまり無いんだよね。でも、その中で音楽の時間はみんな毎日楽しみにしている。歌をうたったり楽器を弾いたりする機会は他にないからね。」この言葉を聞いて僕は音楽がこのクライアントの方々にとってとても大事な時間だということに気づくことができました。
 春のセメスターでは、僕がリードする側に回り、音楽療法士の方が僕のセッションを観察してその後に意見や改善点を僕に伝えてくれました。セッションをリードする中で様々なことを感じました。そこでいくつかシェアしたいと思います。
 一つ目は、リードすることの難しさです。セッションをリードするときは楽器を弾きながら歌うのはもちろんですけど、それに加えてクライアント一人一人の観察もしなければなりません。音楽に対してどのような反応を示しているか、前のセッションから変化はあるのか、事前に立てておいたセッション内での目標を達成できているかなど気にかけることは沢山ありました。最初は、一つに集中するともう一つのことを忘れてしまうことが多かったですけど、だんだんそれにも慣れていくことができて、春セメスターの最後の方では始めに比べたら上達したと思います。
 二つ目は、アイコンタクトの重要さです。音楽療法では、音楽療法士とクライアントの間で信頼関係を築くことが重要な点の一つです。アイコンタクトを取ることはその関係を築くのに必要不可欠だと思います。なので、楽器を演奏したり歌う中で自分が緊張して下を向いていたり、楽譜をじっと見ていてはいけないということに気づかされました。なので、アイコンタクトをしようとする結果、楽譜を進んで暗譜したりすることもできるようになりました。そのような意味でも、セッションの中でのアイコンタクトは非常に重要だと感じました。
 三つ目は、クライアントの方がセッションの目標を達成、新しい反応や行動を示したときに感じる喜びです。これは、観察をやっているときにも感じていましたが、セッションをリードするようになってから更に違う形で感じることができるようになりました。クライアントの方々が毎週よい方向へ向かっているのを見て感じることができて、「こんな自分でも音楽を通してこの人たちに何かすることができる。この人たちの人生にプラスになることができる。」と思うようになりました。このようなことがおこったら、自分のことのように喜ぶこともありました。
 約7ヶ月間の実習で様々なことを学びました。沢山の初体験を通して自分自身、そして音楽療法士を目指す者としても成長できたと思います。今年の実習では子供のセラピーセンターにいく予定です。この場所でも、以前学んだことをしっかり生かしたいと思っています。まだまだ音楽療法を勉強する学生としては未熟者ですが僕の経験が少しでも皆様の役に立てばと思い今回この記事を書かせていただきました。最後まで読んでいただきありがとうございました。
 記事の内容に関してご感想やご意見がございましたら kensax424@gmail.com にご連絡していただけると幸いです。花崎 拳 

[編集後記] 
8月26日(日)の午後、音楽療法関連分野の研修会ということで『日本の社会福祉・地域福祉~音楽療法士として必要な知識~』と題して日本福祉大学の原田正樹先生にご講義いただきました。先生は伊賀市の地域福祉アドバイザーでもあり、伊賀市社会福祉協議会としても長年にわたり大変お世話になっている方です。
講座の中で一番印象的だった言葉を紹介します。高齢者の地域生活を活力あるものにするためには、「きょういく」と、「きょうよう」があることが大切。これは、「教育」と「教養」ではなく、「今日、行くところ」と「今日の用事」だそうです。会員たちもこの言葉には大いにインスパイアされたようで、感想アンケートにはこの言葉が多く引用されていました。今後も介護予防の一助として、「地域に根差した音楽療法を続けていきたい!」そんな思いを、みんなが改めて持つことができた質の高い講座でした。
さて、次回の研究会主催講座は、11月に伊沢先生をお招きして開催いたします。こちらは毎回人気の講座で、なんと早くもpart6を数える回となりました。『老人とuta』にまつわる、伊沢先生の実践に即した血の通った講義となるはずです。たくさんのご参加をお待ちしています。(文責:吉田) 

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