I don’t like you, but I have to love you

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写真: 日本の花「桜」(サクラ
動画: 映像献花「さくら」(2011・3・11)

アメリカ音楽療法 についてのニュースブログ記事(Google)

伊賀音楽療法研究会(三重県伊賀市)から「世界と日本の音楽療法情報」が送られてきました。

伊賀音楽療法研究会メールマガジン3月号(No.128)

[世界音楽療法情報]

JMTSPアメリカ音楽療法だより(74)
皆様こんにちは。伊賀音楽療法研究会メールマガジン・3月号の担当の加瀬織恵と申します。3年程前にも一度投稿させていただき、そしてまた今回も投稿する機会をいただいてうれしく思っています。前回はまだまだ音楽療法の勉強を始めたばかりの時でしたが、今回は新米ですが音楽療法士としてこの記事を書くことができる事に感激しております。
現在は音楽療法士として働きながらテンプル大学で修士号取得のため最後のセメスターを迎えております。書きたいトピックが多々ありますが、今回は私のインターンシップの経験を書かせていただこうと思います。
 私がインターンをした州立の施設は、精神障害、知的障害、発達障害、性的虐待、トラウマなどを持つ18歳以上の長期滞在施設でした。また、施設の敷地内には殺人未遂、放火、暴力的性犯罪を犯し有罪判決を受けた人たちの刑務所もありました。このようなユニークな施設なので、インターン中は様々な診断を持つクライアントとセッションが出来ました。
その中でも印象深いケースを2つ程紹介させていただきます。

ケース1: 発達障害、知的障害の診断を持つ人たちとのセッション
 このセッションは、同州の州立施設が閉鎖してしまうため、その施設にいた人たちが私のインターン施設にトランスファーされて来た時に始めたグループセッションです。このグループセッションの目的は、同ユニットに既に滞在しているクライアントと新しく来たクライアントを混合して、トランジションをスムースにする事、そしてこの混合されたクライアント達をユニット内のコミュニティーで円滑に機能させることでした。このグループは、30代前半から50代前半の女性8人で、主に楽器をつかってのインプロヴィゼーション、そして歌を中心としたセッションを彼女たちのユニットのコミュニティールームで毎週一時間、6ヶ月にわたり試みました。私が初めてコミュニティールームに入ってまず目にしたのが、耳にキーンとくるような声で「家に帰りたい」と泣き叫ぶ新しくトランスファーされてきたクライアントでした。そして、彼女に対し「だまれ!」と怒鳴り散らしている他のクライアント数人がいました。まさにみんなが混乱・興奮状態で、失笑してしまうほどの勢いでした。これはかなり時間が掛かるかなと思いつつ、一息つきセッションを始めました。このグループの初めてのセッションは歌を数曲歌い、声のインプロヴィゼーションを数回して終わりました。歌を大きな声で歌っている人もいれば、聴くだけの人、泣きながら聴く人、立ち上がって体を動かしながら歌っている人、泣き叫ぶ人がいました。このセッションは、みんなの一人一人の個性や行動のアセスメントをしながらこのグループの方向性を考える大切なセッションでした。明らかにクライアント達が新旧グループとしてわかれているため、これからどうやってコミュニティーを作っていけば良いのか、どのような音楽の使い方が一番彼女たちに良いのだろか、などを自分に問い聞かせました。このような状態が2ヶ月半程続き、まだ私自身このセッションの方向性についてまた迷っていた時、ある光景を見ました。普段のようにセッションをしている最中に、初日から泣き叫んでいたクライアントがふと笑い、歌の一部分を口ずさんだのです。この時、彼女の表情も変わり、部屋の空気が一転し、今までずっと混乱状態だったグループが一緒に歌い始めました。
彼女の中で現実を受けいれ、今の状態に慣れ始めたのだと思います。また、ずっと混乱状態の中、この週1回のセッションがそのユニット内のコミュニティーの唯一の調和であり、また一貫した作業であったのだろうなと心から感じました。今思えば、この瞬間がこのグループのターニングポイントだったのではないかと思います。この回を機に少しずつグループの様子が変わっていき、6ヶ月だけのセッションのはずでしたが、私が去った後もこのセッションを続けていけることになり嬉しく思っています。このセッションを通じて、人と人を繋ぎコミュニティーを築き上げるのに音楽療法が適切であり、大切な役目を果たしている事に改めて音楽療法の凄さと重要性を実感しました。

ケース2: 暴力的性犯罪者とのセッション
 このセッションは、暴力的性犯罪で有罪判決を受け服役中の20代半ばの男性とのセッションでした。彼は間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder)と診断され、また、幼いころに親から虐待を受けた過去がありました。彼が自分から音楽療法をやりたいと彼の担当セラピストに申し出て、このセッションが実現しました。彼は最初のセッションに、エレキとアンプを持参してきました。彼は、自由時間の時には常に自分の監房にこもってギターを弾いている事を話してくれました。
好きな音楽のジャンルはヘビメタとパンクロックらしく、早速いつも弾いている曲を弾いてくれました。この時私は、なんて辛そうで挫折的な音なんだろうと思いながら聴いていました。そして、この辛そうで挫折的な音と一緒に混ざっている悲愴的な音、そして攻撃的な弾き方に衝撃を受けました。そして、間違えると演奏を止め、彼は自分自身を罵り、また演奏を再開すると言うパターンで20分程弾きました。この演奏時、彼の辛そうな音と攻撃的な弾き方とは別に、まったくの無表情で演奏する姿も目の当たりにしました。「I totally rocked it on my guitar. That was awesome (かなり揺るがす演奏が出来たよ。最高。)」。弾き終わった後、彼はこの一言を言い放しました。私はこの言葉を聞き、これは自分自身と自分の感情との繋がりを失っていて、しかもその事に気づいていないなと感じました。それと同時に、まだインターンで経験不足の私にどれだけ出来るのかなと不安になりました。
 最初の1ヶ月程は、主にインプロヴィゼーションとディスカッションをしていました。そして、ある時のセッションで、彼が母親の事を少しだけ話してくれました。1ヵ月後に彼に会いに来る事が決まったそうです。でも、毎回母親と話すたびに口論になり、彼は怒りを抑えられなくなるそうです。そこで、話すのではなく、言いたいことを歌にしてレコーディングをして、母親にCDを手渡す事を提案してみたら、少々抵抗しましたが直接話をするよりは良いと言ってトライすることになりました。
こうして、ソング・ライティングが始まりました。まずは母親に何を伝えたいか、これを手紙形式で書き、その文章と内容を整理して歌詞が出来上がりました。次に曲作りです。これは、彼自身が自分で1週間かけて作り上げてきました。私はその曲のタッチアップをアシストしただけで、効果音やミックスはほとんど彼が自分でしました。そして、レコーディングをし、CDが出来上がりました。出来上がったCDを聴き終わった後、彼はこう言いました。「このCD、母親に渡さないかも...言いたいことは歌ったから」。彼が母親に一番伝えたかったこと、それは...
...
「I don’t like you, but I have to love you」
 これが今の彼の精一杯。でも1つのプロジェクトを終わらせた彼の表情は、初めて出会った時に比べると少しだけ変化したようにと思えました。彼のセッションの目的は、自己認識、自己表現、洞察力を養うことでした。これがソング・ライティングによって少しは達成できたかなと感じました。それと同時にこのソングライティングのプロセスが彼に影響を及ぼし、日常で適用できるコーピング・スキルになってくれればいいなとも思いました。
 インターンシップでは多くのことを学び、音楽療法士として、そして人として成長できたかなと感じています。これからも色々なことを学びながら成長していきたいと思います。長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。

[編集後記]
3.11東日本大震災から1年が経とうとしています。テレビでは連日、東日本大震災関連番組を放映しています。中には「歌のチカラ」と題した音楽にスポットをあてた番組も見られます。震災復興において音楽が多くの被災者を勇気づけ、傷ついた心を癒したことは間違いないでしょう。今こそ、音楽療法そのものが科学として位置づけられる必要があるのではないかと思います。第12回日本音楽療法学会学術大会において、音楽療法の新たなステージが開かれることを期待しています。

伊賀音楽療法研究会メールマガジン編集室
〒518-0869
三重県伊賀市上野中町2976-1上野ふれあいプラザ3階
伊賀市社会福祉協議会
電話番号 0595-21-5866 FAX番号 0595-26-0002

伊賀音楽療法研究会メールマガジンのバックナンバーはこちら
http://archive.mag2.com/0000071430/index.html

伊賀音楽療法研究会
http://www.hanzou.or.jp/music/top-page.htm

関連サイト:

Japanese Music Therapy Students and Professionals
http://www.geocities.jp/jmtsp2004/

JMTSP についてと入会方法|Japanese Music Therapy Students & Professinals (JMTSP)
http://ameblo.jp/jmtsp/entry-10022542018.html

Japanese Music Therapy Students & Professinals (JMTSP)
http://ameblo.jp/jmtsp

関連エントリー:

音楽療法アンケートのお願い(音楽療法かけはしの会) – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/2012/01/23/163016

アメリカ音楽療法 の検索結果 – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/アメリカ音楽療法

世界音楽療法 の検索結果 – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/世界音楽療法

日本音楽療法 の検索結果 – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/日本音楽療法

音楽療法士 の検索結果 – 美幌音楽人 加藤雅夫
http://masaokato.jp/音楽療法士

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Yayoi Nakai
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シカゴで音楽療法士として勤務後、音楽療法かけはしの会副理事。Board certified music therapist. Neurologic music therapist. Vice-president of Kakehashi music therapy connection group
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加藤 雅夫
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みなさま、イランカラプテ!日本と世界の人々と共に“平和心”を大切に育てる事が私の願いです。Guitar Mandolin Music 美幌音楽人
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